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閉鎖空間な保管庫
ここは「涼宮ハルヒで801スレ」のネタ保管庫非営利サイトです。 女性向け、BL、801に不快に思わない方のみ自己責任でご覧くださいませ。
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31 古キョン
───夏、そう。夏だ。

俺は今暑くてたまらない

正直この服ごと脱ぎ捨ててすっぽんぽんになりたい気分だ

幸いハルヒを含め女性人は今居ない……いないのだ、が…

古泉「どこへ行ったのでしょうね?涼宮さん達・・・」

キョン「よせ、顔を近づけるな。余計暑苦しい。」

そう、コイツが居た。

別に男同士、どうってことない気はするのだが

なぜかコイツの前だけでは裸になれないのだ。これが体内の危険信号ってヤツか。

古泉「暑いと思えばもう夏でしたね。そんな厚着では暑苦しいでしょう。」

微笑みながら話しかけてくるのはいつもの事だが

…この時ばかりはやけにニヤニヤしていた気がする

キョン「これが厚着っつーのは
     カッターシャツがセーターに見える魔法でも使ったのか?」

古泉「はい、とっても暑そうですから。」

古泉…面目そうに見えるが天然なのか?

そうならぜひともそのおちゃらけ魔法を解いてもらいたいところだ

キョン「ん…ならお前が脱げばいいだろ、お前こそ暑くないのか?」

俺が聞き返すと古泉の口がニヤリと不気味な笑みを作る

古泉「ええ、とっても暑いですね。…そこでどうですか?」

古泉は手に持っていたオセロを俺に突きつけるよう出してきた

…持ってるならもっと早く出せよ

キョン「で、なにをだ?こんな暑い日にオセロなんざ
      よほどの商品が掛かってない限り勝つきはせんぞ。」

古泉「暑い日にオセロですか
     …なら、負けた方は脱ぐ……というのはどうでしょう?」

一つ言っておきたい

こんな暑い日にオセロを出したのはお前だ

キョン「脱衣麻雀ならず脱衣オセロってか…。」

まあハルヒが帰ってくるまでこのままダラダラするのも何だ

ここはこの男キョン、受けてたとうではないか!

キョン「いいぞ、その代わりお前がセットしろよ。」

古泉「ふふっ…りょーかいっ。」

オセロの数がキチンと合っているか

など確認していく

まったくいちいちこまめなヤツだ

古泉「さあ出来ましたよ。僕が先手でいいですね?」

責め…いや、先手かよ。

まあいい、ジャンケンの手間が省けたと思えば容易い事だ。

キョン「だァ…そうくるかぁ…」

古泉「ふふっ…その気になってくれましたね」

気が付けばオセロに熱中してる自分がそこにいた

たかだかオセロなのに…あなどれん、脱衣の力っ!

古泉「おや、接戦でしたね。どちらが勝ったのかな?ふふっ」

俺にはその場が黒一色にしか見えなかった


キョン「数えるまでもないだろう、お前の勝ちだ」

古泉「それは嬉しいです。では……」

キョン「わかってるわかってる。黙って脱がせてくれ。」

俺はカッターの第二ボタンから下に向けて次々とボタンをはずしていった

そして脇から手へ、白い布を剥いでいく

当然上半身はシャツ…ではなく裸だ

こんな急遽なイベント、考えもしてなかったからな…

古泉「いい体していますね。汗のかき具合が素敵ですよ。」

キョン「そうか…よかったな。」

俺は古泉の挑発だかなんだか解らない言葉をスルーし2戦目に入ろうとしていた

キョン「今度は俺が先手か。」

パチン!

まずはありきたりな一手

古泉がここでどこへ置いてくるかだ

キョン「…おい、まだか?」

珍しく古泉が打ち詰まっていた

…いや、初回からそれはおかしいだろう

古泉「すみません。ついつい見とれていました。」

見とれてたって…もしかして俺の体にか?

まったく何考えてるかわからん、コイツは…

キョン「よし、これだけ角を取れば俺の勝ちは決まったな。」

古泉「ふふっ見事です。」

反論する姿勢を見せる事なく古泉は着々と第一ボタン・第二ボタンと外していき

そのままカッターシャツの中に手を引っ込めると

下からめくるように押し上げられたカッターシャツは肩を伝い

やがて頭から勢い良く脱ぎ捨てられた

古泉も俺と同じく上半身裸であった

肉付きも悪くなく、かつスマートな体

こういっちゃなんだが…不覚にも色っぽいと思ってしまった……不覚じゃないかっ!

早ながら決着が近づいてきた第三戦目…ここは負けれん

パチン!

古泉「やっぱり裸は気持ちいいですね。」

パチン!

キョン「気色の悪いことを言うな。」

パチン!

古泉「そういえば涼宮さん達、もうすぐ戻ってきますね。」

パチ…

キョン「…な、なんだと?!」

古泉「時間的にもホラ、ふふっ。」

キョン「こ、こんなトコをハルヒに見られたらどうなると思うんだ!
              "そんな関係"だけではすまされないぞ!」

古泉「まぁまぁ、落ち着いて下さい。」

冷静なのか事態がわかっていないのか古泉は笑顔を崩さなかった

白と黒が綺麗に散りばめられたオセロ板

…思ったより結構楽しめたな

古泉「どうです?"おあいこ"ってことで
      今回は引き分けにしましょうか。」

キョン「ああ、さすがにハルヒ達にこんな姿は見せれんぞ」

"おあいこ"と言い放ったにも関わらずなぜか学生ズボンを脱いでいく古泉

ちょ…ちょっとまてっ!

キョン「おあいこはどうした?!」

古泉「ですから、お互いズボンを脱いでおしまいっと。ふふっ。」

俺は仕方なく学生ズボンを脱いだ

昼間からトランクス一丁ってそこらの親父と変わりないではないか…

古泉「やはり肉付きがいいと裸でも様になっていますね。」

キョン「お前こそなかなか似合ってるぞ」

俺なりには皮肉を言ったつもりなのだ…が

古泉「そうですか…?」

いつもの笑みから少しマジメな顔になったのは俺の思い違いに違いない

…違いない。違いない。

古泉「ほら、外の風景が綺麗ですよ、キョン。」

キョン「お前がキョン…まあ俺はキョンだ。反論できん。」


キョン「…で、どの辺りが綺麗なんだ?」

古泉「わっ!」

──ビクッ!

キョン「な、なにすんだ!?」

俺が窓を覗いたと思うと古泉が急に背中を掴んできた

あやうく落ちそうだったが古泉がガッシリ掴んでいた為大惨事は逃れられた

迷惑なんだかありがたいんだかわからん

古泉「背中…大きいですね。」

キョン「……わかったから離してくれ。」

古泉…まさしく謎の転校生だ

…だが決して悪い奴ではない、それだけは俺が自信を持って言える

古泉「疲れましたか?なんならシャツを着せてあげますよ。ふふっ。」

キョン「ああ、シャツを持って来てくれ。ズボンはもちろん自分で履くぞ。」

古泉「ふふ。それはわかってますよ。
     …勝負についてはまた今度ということで。」

キョン「今度っても…お前にそんな油売ってる暇なんてないだろう。」

古泉「あははっ、それもそうですね。

    ───でも正直…こんなの楽しいとは思いませんでした。」

キョン「ふふ、たまには仕事を忘れて遊ぶのもいいもんだろう。」

ついつい口癖が移っちまったっ・・!

古泉「はい!またお相手お願いしますね。
         …そろそろ涼宮さんが帰ってくるので仕事に移らなくては。」

キョン「ああ…これからもよろしく頼むぜ、古泉。」

古泉「ふふっ、こちらこそ。」


古泉──お前とはまだ長い付き合いになりそうだ


                                    Fin

30 古キョン
うららかな春の陽気にぼんやりと春眠暁を覚えていたら、湿気に満ちた梅雨が過ぎて、気づけばセミどもが合唱する夏がやってきた。
 異性を引きつけ子孫を残す奮闘を、谷口なんかは「鳴くだけで彼女できるなんてうらやましいよな」とか言っていた。
 理性を失ってでも彼女なんて作りたいのかと思ったが、男である性分か否定はしきれないので、あえてつっこまないでおいた。
 HR後、そんなアホの谷口と国木田と少し暑さについて愚痴をこぼしあって、俺はいつものように部室へ向かった。
 ちなみにハルヒはと言うとHR終了と同時に、向日葵みたいな顔して教室を出て行った。何でもまたコンピ研に用があるらしい。
 姑のごときいびりをまたコンピ研部長が受けると思うと、さすがに同情を禁じえなかった。
 ともあれ、弾丸のような行動力を持つハルヒを俺が止めることなんて、決して出来るわけがない。
 なので、今は諦めて通学鞄を持って廊下を歩いているわけだ。授業で疲労した足で習慣づいた廊下を歩いていたら、見たことのあるというか死んでも忘れられない、御姿を発見した。
 何を隠そう、朝比奈みくるさんである。
「あ、キョンくん……」
 俺を発見すると申し訳なさそうに、静々と呼び掛ける朝比奈さん。
 どうしたんですか一体。俺でよければ相談に乗りますよ。
「実はその、禁則事項なので詳しくは言えないんですが、ちょっと用ができちゃいまして。それでもし良ければ涼宮さんに伝言をお願いできますか?」
「え、ええ。いいですよ」
 ありがとうございますと、小鳥のように頭を下げて、さっさと未来人な朝比奈さんは返事も聞かず、俺のもとを去っていった。
 おいおい。それじゃあ、今日はメイドな朝比奈さんによる午後の緑茶が飲めないってことか。
 すると急に虚脱感が湧いてくる。

このまま帰ろうかと思ったが、ハルヒが部室にやってこないとも限らない。俺の不在によるペナルティは尋常でないものが予想されるので大人しく部室へ行くことにする。
 扉を開けると、予想してもいないことが目に入った。
 カッターシャツの前をはだけた男子生徒がいたのだ。
「ああ、キョンくんですか。良かった」
 と言ったのはニヤケ顔を絶やさない超能力者こと古泉だった。
「何をしているんだ。俺はお前の裸なんて興味はないぞ」
「ほら、最近暑いじゃないですか。滲み出た汗でちょっと気持ち悪くなりまして。それで長門さんもいないようですから少し涼もうかと」
 そういえば、部室の置物と化している宇宙人こと長門はいない。
 男と密室で二人きり、ということに気づく。
「やれやれ、何の因果があってお前と二人きりにならなきゃならないんだ」
「涼宮さんと朝比奈さんはいらっしゃらないんですか?」
 俺がハルヒと朝比奈さん不在の理由を古泉に話すと、
「なるほど――」
 とそれだけ返事した。
 何となく、そのときの古泉の微笑みに違和感を覚えたが、暑すぎてそんな細かいことを気にする余裕がなかった。
 さて密室で男同士、黙って座る趣味なんて、俺にはない。
 自然といつものようにテーブルゲームをする運びとなった。
 ちなみに今日はチェスだ。ルールもろくわからんかったが、古泉が手取り足取り教えてくれたので、それなりにプレイできる。しかし教えてくれたのはいいが、何故かこいつはいつも俺に負ける。
 なんでだろうね。

疑問に思いつつも、淡々とゲームを進める。
「こういう事例を知っていますか?」
 何だ藪から棒に。
「場所は忘れてしまいましたが、ある外国で事件が起こったんです」
 だから何なんだ古泉。全然話が見えないぞ。お前の回りくどい話し方は少し改めたほうがいいと思うぞ。
 あと今回は抽象的すぎやしないか。
「まぁ、聞いてください。どういう過程かはわかりませんが、その事件の犯人は人質を取って建物に立て篭るんですよ。さすがに捕まりたくはありませんからね。人質にされた人はたまったものではありませんね」
 右から左へ古泉の話を流しつつ、俺はチェス駒を動かす。む、何だか悪い流れだな。
「人質を取られた事件は長引くのが常道です。何せ人様の命がかかっているわけですからね、慎重に事を進めなければいけません。おかげで犯人もそうですが、人質は何時間も何時間も倍以上の極限状態を味わいます。すると不思議な事象が起こるんですよ」
 それでどうなったんだ、と訊こうとしたら、古泉はチェス駒を動かし、
「チェックメイトです」
「あ――」
 うかつだった。攻められていたことに気づかなかった。古泉の話を聞いていたせいもあるが。
 仕方ない。初めてこのゲームで勝ったんだ。なんか良かったら罰ゲームでも受けてやろうじゃないか。
「そうですね……」
 人差し指を口元に当てて、思案する古泉。やがて、ポンと手を打った。

「実は最近手品にこっていましてね。それを見てはくれませんか?」
 そんなのでいいのか。下手なものを見せつけられるという意味では罰ゲームだが。
「では、準備をしたいので、良ければ目を瞑っていただけますか?」
 わかったわかった、ぼやきながら俺は大人しく指示に従う。
 視界が闇に包まれ、セミの合唱に混じって古泉の衣擦れが聞こえてくる。
 すると、唇に何やら変な感触がした。
「むぐっ」
 目を開けると、古泉の顔がさっきの三倍くらいの大きさで見えた。
 古泉を突き飛ばし、俺は椅子と共にぶっ倒れた。
「な、何をするんだっ」
「罰ゲーム、ですよ。先程言ったじゃありませんか、キョンくん」
 古泉は俺に覆いかぶさり、更に唇を重ねた。
「やめろ、いい加減にしろっ」
「先程の事件がどうなったかお教えしましょうか?」
 古泉は俺を羽交い絞めしつつ、話し出す。器用すぎるぞ。
「極限状態に置かれすぎた人質はやがて、犯人に対しある感情を発露します。そう――」
 相変わらずもったいつけて、古泉は言葉を継いだ。
「恋愛感情ですよ」
「なに……?」
「チェックメイト、です」


29 古キョン

新参者でしかも携帯厨だけど小説投下します。
読みにくかったらスマソ‥




痛い程感じる視線。
気のせいだと思いたくてもごまかせない程の。
あまりの居心地の悪さに耐えきれず俺は口を開いた。
「何だよ古泉…さっきからじろじろと」
気色悪い、と苛立ちを隠さず睨む。
今部室には俺と古泉の二人だけしかいない。
外の雑音しか音のない世界で、じーーっと効果音が聞こえてきそうな絡み付く視線。しかも同性からのなんて我慢できるか。

「いえ、何でもありません。気にしないでください。 」
何でもないわけあるか!というツッコミは飲み込んで机に置いた鞄に手を伸ばす。
今日はもう帰ろう。さっきからこの最悪の状況に1時間も耐えているんだ。他の誰かがくる気配もない。きっと今日は何もないんだ。

鞄をつかみ立ち上がると同じく古泉も立ち上がった。
おいおいマジですか?

「もう帰るんですか?」
「あぁ、オ レ は、帰る。」
“オレは”にアクセントをおいて返す。だからお前は一緒に来るなと言外に含ませて。

「なら僕もご一緒します。」
…‥お前、気付いてるだろ。というか嫌がらせなのか?

そんなこんなで帰り道。
何が悲しくて男二人で同伴下校なんてしなきゃならないんだ。
定期的に溜息をつく俺に見兼ねたのか古泉が口を開く。
「どうしたんですかキョン君。溜息ばっかついて。」
誰のせいだ誰の…って、
「うわっ」
いきなり古泉に手を引かれる。疑問を浮かべ古泉の顔を見ると、
「そんなに退屈なら僕が楽しいことをしてあげます。」
ってなんだそりゃ。


「1と2、どっちがいいですか。」
連れ込まれた人気のない公園の入り口でいきなり尋ねられる。
「は?」
「好きな方を選んでください。」

「…じゃあ、い‥」
「ちなみにどちらかは公園のベンチで恋人のようにいちゃいちゃコース。一方は茂みの中で青姦コースです。」
「5のこの場で解散コースで」
「4のトイレでドキドキコースですね。」
「5って言ってるだろーが!大体何がドキドキなんだ?!俺にとっちゃビクビクだ‥って連れ込むな!!」

バタン、と結局個室に連れ込まれ洋式トイレに座らせられる。
「どこら辺がドキドキか教えてあげますよ」
そういって古泉は俺のナニを制服の上から握ってきた。思わず息が漏れる。
「古泉‥お前まじふざけんな…っ‥ぅあっ」
「声だしたら誰かに聞かれちゃうかもしれませんよ?公衆トイレなんて誰でも入ってくるんですから。」
ドキドキでしょう?とエセ爽やかな笑顔を向ける古泉に殺意が芽生える。
しかし下肢をいじられている今、不本意にも快感に身体は言うことを聞かず、悪態をつこうにも口を開けば艶めかしい声が漏れてしまうのでできない。

「ぁっ…古泉‥‥頼むからやめ、て…くっ‥ぅ」
「何ですか?聞こえないですよキョン君。」
このやろう‥!
「頼むからっ…いじ、わるなこと‥しないでくれ‥」
涙目で懇願すると古泉は手を放した。そうだよな、いくらなんでもこいつだってそんなに嫌なやつじゃないよな。

「気持ち良くしてあげていたつもりなんですが、意地悪だなんて‥すみませんでした。もう僕はしません。…けど、どうするんですかソレ。」
古泉の指差した場所はさっきまで古泉が触っていたところ。すっかり元気になってしまった俺自身。
「そのままで帰るんですか?ごまかせないくらいになっちゃってますけど。」
「ぅ、うるさいっ」
「僕は止めろって言われちゃいましたし、残ってるのはあなたの左手だけですね。」
古泉、お前今、今日一番の笑顔だぞ。

「ふっ‥ぅ…あ、ぁ‥‥っ」
「キョン君はいやらしいですね、こんなところで、僕の目の前でこんなことして。
こんなに濡らしちゃって、感じてるんですか?」
ズボンと下着を脱いで自慰をする俺をじっと見つめ、古泉が笑う。それだけでぞくっと快感が身体を駆け抜ける。
これじゃまるで変態じゃないか。

「こ‥ぃずみ…‥もぅっ‥」
「イっちゃうんですか?」
こくこくと頷く。
「それで僕にどうして欲しいんですか?」
「…‥な、舐めてっ」
「どこを?」
「っ!‥‥俺の」
「でもさっき意地悪しないでって頼まれちゃいましたし」
うっ、と息が詰まる。
こいつの思い通りになるのは気に食わないが、今はとにかくこの熱をどうにかしたい。
「お願いだから‥イかせて…くれっ…ふぁっ!‥頼む‥」
「まったくあなたは我儘ですね。」
「ぁっ!」
古泉の咥内に俺のモノが含まれる。中の熱さと絡み付く舌の動きに俺はあっけなくイってしまった。
息があがってぐったりとよりかかる。

「キョン君の我儘をきいてあげたんだから僕のお願いも聞いてくれませんか。…挿れさせてください。」
「っ?!」
身体が浮かんだかと思えば壁に向かわせられる。
反論しようと後ろを振り向くより早く古泉の指が後ろへと無理矢理入り込んできた。
「痛っ‥嫌だ!」
「僕だって気持ち良くなる権利はあるでしょう?あなただけなんてずるいです」「やぁっ…!」
中で指をくいくいと動かされる。次第に慣れてきて弛緩したそこにさらに指を増やされ、イイ所をいじられて立つのも辛くなってきた。
指が抜かれたかと思えば指とは比べものにならない太いモノが入ってくる。
「やだって‥ぁっ、はぁ!…ぅぁ‥‥」
「すごく気持ちイイですよ、キョン君のココ。‥うっ」
激しくピストンされ、再び自身から透明な液が漏れる。
「また勃ってるじゃないですか。気持ちいいんでしょう?あなたも。」
「違ッ!…ひゃっ」
古泉は衣類をまとったままの上半身に手を伸ばし、シャツの上から乳首をきゅっと摘まれる。
「ふぁあああっっ!!?」
思わず古泉の手に白濁を出してしまった。
無意識に締め付けてしまったらしく俺の中で古泉も欲を吐き出した。
「ぁっ…てめ、中出し‥っ」
「すみません。あまりにキョン君が締め付けるもので」
「ふざけんなーーーっ!!!」


もう絶対こいつとは一緒に帰らない。てか二人きりになるのも危険だ!
痛い腰をさすりながら、俺は古泉への警戒の必要性を再認識した。

28 22&25の続き 完結
「…キョンくん、最近顔色が悪いです」

心配そうな上目遣いに覗き込まれ、俺はほんの僅か虚を突かれた後、至って健康体だというような笑みを返した。
うまくいっていたかどうかは定かでない。
朝比奈さんがどう思ったかもわからなかったが、それでも彼女は納得してくれたようだった。
もしかしたら騙されてくれたのかもしれない。
ぱたぱたと軽い足音を立てて走り去る細い後ろ姿を、何とも言えずに見送った。

「…何を話していたんです?」

その俺の後ろ姿を、更に見ていたであろう趣味の悪い奴の声がした。
はっきり言って非常に不愉快だったが全身が震え出すのを止められない。
みっともなく震える腕を片手できつく掴んだがその手すら小刻みに揺れていた。

首の後ろから冷たい腕が伸びてきて俺を背後から抱き締める。
怖気が立つが振り払うこともできない。後が恐ろしいからだ。
腕は俺の首をそのままへし折るのではないかと思うくらい強く力を篭めてきた。

「随分と親しいんですね、彼女とは」
「…お前の、勘繰るようなことじゃ、ない」
「……可愛いですね、あなたは」

朝比奈さんに害が及ぶんじゃないかと、本当は不安で仕方ないんでしょう?
的確に胸の内を言い当てられて僅かなりとも動揺が走る。
背後からぴったりと体を密着させている相手に、それがばれない筈もない。
張り付いた肌ごと振動させるようなうっそりとした声が俺の不安に答えた。

「大丈夫ですよ。もはや僕には、良い意味でも悪い意味でもあなたへの想いしかない」

彼女が幾らあなたに近付こうが僕には関係のないことです。
何故なら僕は、それとは全く関係無しにあなたを手に入れるから。

今度こそ全身が痙攣したように震え出す。
膝に力が入らなくなり、崩れ落ちた俺を見下ろす、酷薄な笑顔。
俺は世界の全てを拒絶するように、有りっ丈の力で目を閉じて、耳を塞いだ。





あの日から、古泉は実質的に俺の上へ君臨し続けている。
部活中は何でもない顔を装っているが、実際の古泉には恐ろしく残酷な一面があるのだと俺はここ何週間かで否応なしに気付かされるはめになった。
最初は部活中でさえ気配が近付くだけで嘔吐しかけ、本気で失神することも何度かあった。
今では大分その回数も減ってきたが、それでも目を合わせることすら出来ないでいる。
奴の中に昔の面影を探すことも、もうやめた。
そもそも顔も見ることができないのにどうやってより内面に迫っていけというのか。

古泉はもはや恐怖の象徴だった。
…一月過ぎて、俺が自分の変化に気付くまでは。





「ぅ…っく、あ、やめっ…!」
「やめませんよ」

にこやかな顔で、古泉は俺を蹂躙する。朝だろうが昼だろうが構いやしない。
回数は両手の指を越えた時点で数えるのをやめた。
自分を傷付けるだけだとわかったからだ。

俺自身からしてみれば何一つままならない俺の体を、古泉は好き勝手に弄りつくす。
最初の一、二回は本気で暴れて抵抗も試みたが、それも三回目からはやめた。
古泉は俺が刃向かうことに対して容赦しない。徹底的に打ちのめす。
そして気絶した俺を、意識すらない俺をレイプして、ぼろ布のように変えてしまう。

「っあ!あっ、あ、あぐ…っ!!」
「くっ………」

目の前がスパークする。たくさんの火花。それから、一面の白。
全身隈なくいじられて突っ込まれてかき回されて何度も何度も頭がおかしくなるほどイカされて、実際何度かおかしくなりかけたこともあって、おまけに毎回中出しまでされて、そんなことばかり繰り返されて未だに正気を保てる人間などおそらくこの世に存在しないだろうと思う。
少なくとも俺はそっち側の人間じゃなかったようだ。
要するに俺もおかしくなりつつある。

「汚れちゃいました…舐めてください」
「んっ、う……」

口の中へ無遠慮に突っ込まれた指に俺はおずおずと舌を絡める。古泉は嬉しそうに俺の顔を見下ろしている。

舐めているのが自分の精液だとしても既に何も感じない。味もしない。匂いもわからない。
俺は古泉に順応しているんだろうか、それとも俺自身が恐怖かなにかで麻痺しつつあるのだろうか。
ぴちゃ、と音を立てて指が引き抜かれる。舌の上にぞわぞわと背筋が粟立つような感覚だけが残った。
古泉はやはり至極嬉しそうな顔で屈み込み、さっきまで指を銜えさせていた俺の口唇に自分のそれを重ねる。

「本当に可愛い。…愛していますよ」

愛している?それは一体どんな呪文だったっけ?



「……異常が発生している」

今度は長門か。俺は下から見上げてくる大きな両目に苦笑いを返した。
朝比奈さん、長門と来れば次に思い当たるのは当然ハルヒな訳だが、これがそうもいかないだろうという予想は既にかなりの確立で打ち立てられていた。
意味はわかりかねるが、どうやら俺はハルヒの"鍵"らしい。
その俺がこの前から不自然に体調を崩したり部室でぶっ倒れたりすれば当然ハルヒもなんらかのアクションを起こすのが筋というものだろうが、残念ハルヒは俺の異常に全く気付いていなかった。
それが長門の起こすことができるロジカルな奇跡のせいか何だかはわからないが、とにかくこれだけわかりやすい状況でハルヒのみ気付かないとあればそれこそ異常でしかない。
そしてその状況は、誰かが作り出したものなのだ。あいつだけが気付かないようにと。
異常が解除されるまでハルヒは、多分この先もずっと、俺と古泉のことには気付かないのだろう。
ずっと。

「発生してるかもな、確かに」

ぽんぽんと頭を叩かれた長門は、不可解そうな目をして暫く俺を睨んでいた。



目が覚めると古泉の腕の中だった。気色悪い以前に、また気を失っていたことに気付いて蒼褪める。
慌てて体を確かめるが、今回はどこにも暴行の痕はなかった。
単に終わった後、疲れて眠り込んでしまっただけのようだ。

ほっと息を吐いて、即座に安堵した自分に愕然とした。
古泉がすぐ傍にいるにも関わらず何を安心しているのだろう。
俺がするべきことは、今すぐこの場から逃げ出すことだ。

しかし、何時間も酷使された体は思うように動いてくれなかった。
軋むように可動する関節とほんの何分か戦っていた俺は、やがて諦めて元の位置に戻る。
すなわち古泉が俺を生け捕りにしようと伸ばしたままの腕の中へ、だ。
さすがに半端ない勇気が要ったが、目を瞑ってさっと行動すれば何でもないことだった。

近頃になってようやく慣れてきた体温の低い檻の中、俺は音もなく溜息を吐く。

(……何やってるんだ、俺は)

あれだけ古泉が恐かった筈だ。吐き気がするほど。その声を聞くだけで体の自由が利かなくなるほど。

なのに、このところ人形のように扱われ過ぎた俺は、最近本当に人形としての心得が板についてきている。
部活中のいかにもうそくさい笑顔で表面を塗り固めた古泉は恐ろしくて直視することもできないのに、普段とは比べ物にならない傍若無人ぶりで俺を犯す古泉は─────

目を開けて、古泉の寝顔を確認する。
よく眠っているようだ。
安らかな寝顔に、なぜか涙が零れた。
涙もろくなったなぁ、俺。

「どっちが、本当のお前なんだろうな……」

二人の古泉。表裏一体。どちらも鮮明で、どちらも曖昧。
そこにいるのに、いないような。触れているのに、いつの間にか掻き消えているような。存在として、ひどく不確かな。
だとしたら俺に愛だのなんだのと囁き続ける方はどっちだ。俺に容赦なく暴力を振るう方はどっちだ。
セックスの後、いつも少しだけ泣きそうな顔をしているのは。



教えてほしい。神様とか、そういうの。何でもいい。頼むから。
祈るような思いで俺は目を閉じる。更に心なしか身を縮めれば、それだけで目裏に入り込む眩しさはゼロになった。視界は再び闇に閉ざされた。





27 キョンの憂鬱
今、俺は部室で暇つぶしにといつものように古泉とオセロをして遊んでいた。俺たちの他には長門しかいない。
朝比奈さんはまだ来ておらず、ハルヒは「先に行ってて」と言い、まだ来ていない。そんな中、俺はあることを
思い出していた。それは今日の昼休みに遡る。

「しっかしSOS団の女子は美少女揃いだよな」そんなことを急に谷口が言い出した。
俺たちはいつものように国木田を加えた3人で集まって昼食を食べていた。
「涼宮ハルヒだけじゃなく、朝比奈さん、長門有希といった美少女が揃うなんて、奇跡だよな」谷口が続ける。
それもそうだねと、国木田が答える。
そりゃあこの3人がユニットを組んでCDデビューでもしたら人気がでるかもしれないが、
あらためて考えると凄いかもなと俺も思っていた。が、突然谷口が奇妙なことを言い出した。

「あと1人、古泉君ってのがいたな、あれもなかなかの美少年だよな。あっち系の人にももてそうだな」
俺の箸を動かす手が止まった。お前の言うあっち系の人とは、新宿2丁目のお姉さんと呼ぶよりお兄さんと呼んだ方が正しい人たちか。
「俺はそんな趣味はないけど、どっちかというと女より男にもてるタイプじゃないかな」と、谷口は更に続ける。
俺は少しの間だがあいつと一緒にいたが、あいつを性の対象に見たことがない。あいつに対しては嫌悪感のほうが強い。
あの嘘くさい笑顔といちいち説明臭い口調はうざったい以外の何物でもない。
お前はあいつの表面的なとこしか見てないからそう言えるんだ。
あいつと同じ空間に1時間でも一緒にいてみろ、こっちから逃げ出したくなる。
などと、俺がそう思いながら再び弁当に箸をのばしたその時、

「キョン、お前古泉君とデキてんじゃねぇか?」と、谷口がとんでみないことを言い出した。
「はぁ?」と俺は立ち上がり、持っている箸でこいつの目を突いてやろうかと思ったが、
ここはこらえ、「どうそしてそう思える」と冷静に聞き返した。
「だってこの前の野球大会のとき、ベンチで隣り合って近い距離で話してたじゃねぇか、ただの友達ならあそこまで近づかねぇよ」
「確かに」国木田が冷静に返す。
それはあいつが勝手に近づいてきたんだと、俺が反論しても、
「ふ~ん。ま、そういうことにしておくか」と真面目に聞きもしない。


少なくとも、こいつらには俺と古泉が普通の関係だはないと思われているらしい。
それは間違ってはないが、あくまでハルヒに関する事務的な関係で、恋人とか、ましてや肉体的な関係など一切ない。
そうこうしている内に休憩が終わり、午後の授業が始まった。
その後は俺も気にはしなかったが、放課後、いつものように部室に行くと、
古泉が待ってましたといわんばかりの笑顔で、俺をオセロに誘っているのを見て、昼休みのことを思いだしたのだ。

オセロ盤をはさんだ俺と古泉の間には会話はない。ただ俺は朝比奈さんがくることを待っていた。そしてただなんとなく古泉の顔を見た。
すると何だ、古泉の顔がやけに輝いて見えるではないか。ただうざいだけだと思ってたあいつの笑顔や、真っ直ぐに伸びたきれいな髪。
その髪をかきあげる仕草、そこから見えるあいつの耳など、古泉の一挙手一投足にみとれてしまっていた。
しかしそこでハッと我に返り、オセロに集中しようとオセロ盤に目をやった。
しかし、オセロの石を指すあいつの細く白い指に魅せられてしまい、再び俺は止まってしまった。
そうしていると、「どうしました?」と古泉声が聞こえる。
「あなたの番ですよ」と古泉が優しく微笑みながら言ってきた。俺は平静を装って右手を伸ばした

しかし、伸ばした手の先には丸いオセロの石ではなく、何か細いものをつかんでいた、俺は右の掌に目をやると、
それは自分の石を持った古泉の左手の指だった。俺は左手にある自分の石ではなく、向かいの古泉の石、
しかもそれを持った古泉の指を握っていた。
「わっ!!」と情けない叫び声をあげて俺は椅子ごと後ろに倒れた。このまま後頭部を打って死にたい気分だったが、人はそう簡単に死なない。
「大丈夫ですか?そんなに慌ててあなたらしくない」と古泉は少し心配した顔で俺を見てきた。
まして、お前にみとれていたとは言えるわけなく、
「なんでもない。ちょっとボーっとしていただけだ」と返した。
今の俺はあいつをまともに見れないし、顔を見せられない。
なぜかというと、今俺の顔は真っ赤に染まっているからだ。
自分でも分かるくらい俺の顔は熱を帯びている。これがどこからくるものかは分からないが、
古泉に対して特別な感情を抱いていることは確かだ。朝比奈さんとは違うまた別のものだ。
これが恋なのか?しかし自分では認めたくないし、違うと思いたい。

長門が小声で「ユニーク」というのが聞こえた。古泉はずっと下を向いたままの俺を心配そうな顔で見つめている。
そんな顔で俺を見るな、いつもの嘘くさい笑顔を見せろ。そうは思っても口に出しては言えない。
それを言ってしまえば古泉に対する恋心を認めてしまうような気がする。
ハルヒに死刑を宣告されてもいいから、ここから逃げ出したくなっていたその時、
「お待たせー!!みくるちゃんがなかなか言うことを聞かなくて手間取っちゃって」
とハルヒが楽しそうに喋りながらはいってきた。
その隣では恥ずかしそうにチャイナドレスを着た朝比奈さんが立っている。
今までの俺なら喜んだだろうが今は違う。
今の俺には世界中のどんな女性よりも古泉一樹という一人の男にしか目がいかなくなってしまったのだ。
結果として、谷口が昼に言ってたことがきっかけになった。
明日からどうしようと、悶々とした思いのまま俺はこれから過ごしていくこととなる。

26 キョン×古泉 「古泉一樹の挑戦」 
その日の放課後、俺はいつものように部室のドアをノックした。

「どうぞ」

 一呼吸置いた後、ドアの向こうからは「はぁい」という麗しの朝比奈さんのではなく、違う声が返って来た。
 ガチャッとドアを開けると、案の定、そこには団長と書かれた三角錐がある机に踏ん反り返っているハルヒも、
 メイド服に着替えて俺の目と喉を潤してくれる、部室専用のエンジェール朝比奈さんも、
 ほぼ定位置の窓際の椅子で、この頃はどこからか持ってきたのか辞書よりも分厚い本を読んでいる長門も、
 どこにも見当たらず、無駄にキラめくいつもの人畜無害スマイリーで椅子に座っている、古泉一樹のみが居た。

「お前だけか、他の皆は?」

 俺は面白くなさそうに、というか実際面白くなかったのだが、
 鞄を机に放り出しながら、とりあえず疑問に思ったことを尋ねてみる。

「さて、どこに行かれたのでしょう。僕が部室に来た時は、何やらお三方が話し合っておられたようですが、
僕の姿が目に入るや否や、涼宮さんが、
『古泉君、本日のSOS団の活動は諸事情により中止よ! キョンにそう伝えておいて。これは団長命令だから!』
と言われながら、長門さんと朝比奈さんの手を引っ張りつつ、勢いよくそのドアから出て行かれました」

 と、俺の後ろにあるドアを指差して、お決まりの大きく肩をすくめるポーズをした。
 どうでもいいが、そのセリフらしき所を真似た無駄に高い声はハルヒにまったく似てないぞ。どうでもいいが。
 それよりも、諸事情とはなんだろう。あいつはまた、何かとんでもないことを企んでいるのではなかろうな。
 はあ、と俺はハルヒが計画している何かに巻き込まれる、これからの俺が何かしら抱くであろう苦労を思いながら、
 憂鬱な溜息をつき、古泉の向かいのくたびれたパイプ椅子に座った。

「涼宮さんは、どうやらまた何かを計画しておられるようですね」
「ああ、そうみたいだな」

 その言葉に出来れば同意したくない俺の苦い表情とは対照的に、
 古泉は自分の顎に手を添え、額に指を当てながら楽しげに微笑みつつ言ってきた。
 何でそんなに嬉しそうなんだ。お前、あいつが何をやるつもりか知っているんじゃないだろうな。
「いいえ。今回のことについて僕は何も知りませんよ。ただ、涼宮さんが退屈しないことは僕は歓迎しますね。
この頃は沈静化していますが、いつまたあの時みたいに、閉鎖空間が起こるかわかりませんから」

 そうだった。こいつは、ハルヒが退屈しない為に、
 わざわざ孤島や雪山でのはた迷惑なミステリのシナリオを書き起こすほどのヤツだ。
 そのおかげかどうかは知らんが、この頃のハルヒはおとなしかった。それは、もう不気味なほどに。
 しかし、この様子だとまた何か起こりそうだな、やれやれ。
 俺はいつも目にする光景が消失している部室を腕組みをして眺めながら、今日はもう帰るかと考えていた時に、
 そいつは、俺が何を考えているかを見透かすように、不思議な光を湛えた笑みの目を開きながら訊いてきた。

「今日はもう帰りますか?」
「そうだな。団長から活動中止命令が出てるなら、やることないしな。帰るか」

 そう返事をし、椅子から立ち上がり俺が鞄に伸ばそうとした手を、突然俺以外の伸びた手が掴んできた。

「おい」
「はい?」

 俺が抗議の視線と声を向けても、俺の手を未だ掴んでいる古泉はどこ吹く風の笑みで返しやがった。こいつ。

「その手は何だ」
「本当に、帰るんですか?」

 俺の質問を華麗に無視し、古泉は念を押すというかどこか願いをこめたかのように、再度俺に訊いてくる。
 その表情は俯いて、前髪に隠れてみえない。
 ――――どうやら、俺の考えは本当に見透かされてたらしい。
 お前は超能力者か、と俺はツッコもうとしたが、本当に超能力者だったことに気付きやめておいた。
 変な紅い玉だけではなく、いつの間にか人の心を読めるようになったのか、なんて冗談を言ってみたりできるほど、
 俺は冷静だった。気がする。

「……いや、帰らない」

 俺がそう言うと、古泉はやっと手を放した。結構ギュっと掴まれていたので痛いぞ。この野郎。

「それはすみません。僕も考えが外れているかもしれないと、少々不安でしたので」

 
ちっとも不安では無さそうな笑みを浮かべながら言われても、全然説得力がないんだが。
 そんなことをぼやきつつ、俺はさてどうしようかと考えていると、また俺の考えを見透かしたかのように、
 さっきとは違う嬉しさの微笑みを崩さずに古泉は、

「さて、どうしましょうか。僕は立ちましょうか?」
「……何で俺の考えてることが分かるんだ」
「さあ、何ででしょう。僕もそう望んでいるからでしょうか」

 何だと。と、俺が驚いている内に、古泉は椅子から立ち上がり、俺の側に寄ってきた。

「だから、大丈夫ですよ。……何をしても、されても」

 顔が近い。耳元で囁くな。微妙に息を吹きかけるな。

「……そんなことを言うと、本当に暴走するぞ」

 俺が横目で見ながら少し低い声で真面目に言うと、古泉は全く動揺せずに、

「いいでしょう。望むところです」

 と、まるで陰謀を企むかのようにニヤリと笑いながら言った。
 よーし、その言葉を覚えとけ。後で憤慨しても知らないからな。
 俺は心の中でそう宣言すると、古泉一樹の挑戦を受けた。



時間帯は漸く太陽がその姿を隠そうかという頃だ。
 部室の窓は閉まっているが、夕陽に染まるグラウンドから野球部やらサッカー部やらの威勢のいい掛け声が、
 まるで遠くから聞こえてくるように、俺の耳に微かに届いていた。
 そこまでは、どこの高校にでもある普通の放課後の光景だろう。
 但し、俺達が今居る空間――――SOS団の活動場所、文芸部部室はどうやら普通の光景ではなさそうだ。
 前にハルヒのおかげで、どうやらこの部室は異空間になっているらしいことは、
 SOS団員の宇宙人と、未来人と超能力者から聞いた気がする。あまり認めたくないことだがな。
 もしかして、俺はその異空間とやらの影響を受けてしまったかもしれない。とにかく、普通の光景ではないことは確かだ。
 その原因はいつも何かを起こす張本人のハルヒではなく、主に今の状態の俺と古泉にあるが。


「んっ……はっ……」

 古泉一樹の挑戦を受けた俺は、まず、そのいつもの微笑み混じりの顔を崩すことに決めた。
 とりあえず、何故か計ったかのように丁度横に立った古泉の顎を持ち、動かないように固定して唇を合わせる。
 無論、手加減するつもりなど全くない。暴走するかもしれないと、俺はちゃんと忠告はしたつもりだぜ。
 というわけで、どんどんキスは濃厚なディープになっていく。
 何度も角度を変えていく内に、口の端から漏れ出る息と入りきらない唾液が溢れてくる。

「ちゅる……ちゅ……じゅっ……ちぅ――――」

苦しくなったのか、息をしようと口を少し開けたその瞬間を逃さずに、すかさず俺は舌を挿し込んだ。

「!」

 古泉は一瞬驚いたかのように身を硬くさせたが、俺はそれに構わず口内を舌で蹂躙する。
 下顎を内側から舐め、歯列をなぞり、舌を舐め、絡め、口で口を犯していく。

「ちゅぱ……れろ……じゅる……ふっ……」

 慣れてきたのか、古泉も積極的に舌を絡めてきた。
 ぐちゅぐちゅとお互いの唾液がいやらしく混ざり合う音が、耳の奥から響いてくる。
 ヤバイ、段々頭がおかしくなっていきそうだ。もう既におかしいのかもしれないけどな。

「ぷはっ……はぁ……ふ……はっ……」

 さすがに俺も息が苦しくなって、唇を離した。一体何分ぐらいしてたんだよ、おい。
 ツーと銀色の糸が架かる先に視線を移すと、俺と同じく半分肩で息をしている古泉と目が合う。

「はぁ……ぁ……さすが……最初から、飛ばしますね……」

 いつの間にやら壁際に追い詰めていたらしく、古泉は少し目元を恍惚とさせて、
 それでも笑みを崩さずに、壁に寄り掛かっていた。くそ。
 息をする度に唇の端から溢れ出た唾液が、顎を伝って頸へと流れ落ちていく様子は、
 ハンサム面と相成って、何だか妖しい色気が出ていた。
 多分俺も同じ状況になっているだろう。少々やりすぎたか。

「これでも少々なんですか。先が思いやられます」

 素早く息を整えた古泉は、遠くを見るかのように目を細めながら笑みを形作る。
 まだまだ余裕らしい。俺はといえば、まだ息が少し荒いが、その余裕を打ち崩すべく次の行動に移った。

「つっ……」

 抵抗するとは思わないが、一応抵抗できないように両手を頭上に上げさせ、片方の左手で掴み、
 もう片方の右手でキチッと締めてあるネクタイをしゅるっと解く。
 そのまま、シャツのボタンを上から三つ程悪戦苦闘しながら外す。
 余談だが、片手でボタンを外すのは難しかった。誰だ、ボタンなんて発明したのは。

「……結構、力強いですね。あ、一応手首に痕が残らないようにしてくださいね」

 さあな。さっきのお返しだ。

「くっ……ん……」

 俺はシャツの襟から覗く、白い項に文字通りかぶりつく。
 そして、舌で舐め上げながら、上へと位置をずらしていき、丁度視線の先にあった耳たぶを甘噛みした瞬間、

「ひゃ」

 と、小さく古泉が呻くのが聞こえた。やったぜ。表情が見れないのがもどかしいが。
「ちょ、くすぐったいですよ。ひぁ……」

 調子に乗った俺はそのまま耳朶を噛み、唾液を含ませながらぐちょぐちょと耳を重点的に攻める。

「ひっ……あっ……、……あ……たま、がっ……お、か……し……ああっ!」

 どうやらこれは結構効いたようで、古泉の口からはどんどん喘ぎ声が漏れていく。
 俺は一旦唇を離し、古泉の表情を観察するべく、正面からじっと見つめる。

「……どうだ」
「はっ……はぁ……さすがに、これは効き、ましたね……。頭の中で……まだ、音が反響してますよ……」

 こんな状況でも解説するのはさすがだな、古泉。
 俺は妙な所で感心しながら、だが、まだ笑みを崩さないとはどういうことだとつっこんでおこう。
 さすがに、表情は恍惚としてるが。中々砦は強固らしい。
 俺の少し苦い表情を見たのか、古泉はさらに得意気な含んだ笑みで、

「ふふ、そう簡単に僕はイキませんよ。もしかしたら、あなたが先にイッてしまうかもしれませんが」
「何で俺が先にイクんだよ」
「だって、あなたのココ……こんなにキツそうですよ」

 手を塞いでいたから大丈夫だろうと油断していた、と言われればその通りだが、
 まさか膝をあげられるとは思いも寄らなかった。
 何で攻めている俺の方が感じてるんだと思うほど、俺の愚息はかなり勃起していた。
 そこを不意打ちのごとく触られて、

「ぐっ……」

 と呻いただけの俺を褒めてやりたい。ちょっとヤバかったが。


「てめえ……古泉……」
「あは、そんなに睨まないでください。僕はあなたにも気持ち良くなって欲しかっただけですよ。……一緒にね」

 最後のセリフは、いつものように耳元に唇を寄せられて、囁かれた。
 それに、ちょっとゾクっときてしまった俺が分からない。
 とりあえず無駄に喋りたがる古泉を黙らせるため、俺は左手の戒めを外し、
 右手をシャツの裾から差し入れ、再び唇で唇を塞いだ。

「むっ……ちゅ……はっ……ん……」

 右手は古泉の上半身をまさぐり、口はさっきよりも激しく舌を絡めて、何回も貪る様に吸い、食み、お互いを求める。
 最初は余裕の表情だった古泉も、俺の右手が胸の突起を探り当ててそこを撫でると、
 目を見開いて、笑顔が段々切羽詰ってきた。よし。
 俺が唇を離して、顎、喉、頸、鎖骨と今度は下っていくように口付けていくと、
 古泉の口からは少しづつ喘ぎを含む、甘い吐息が漏れ出してきていた。本当に甘いかどうかは知らんが。
 そのまま俺の唇は、さっき右手で撫でていた胸の突起へと到達した。
 とりあえず、舐めてみる。

「ひゃう!」

 耳を攻めた時よりも、更に甲高い声が古泉の口から響いた。全く似てないハルヒの真似の声より高かったぞ。
 目線を上げると、自分でも驚いたかのように口を手で塞いでいる。結構その表情は面白い。
 俺は唇を離し、古泉に言ってやった。

「手で塞いだらつまんないだろ。もっと声を聴かせてみろ」
「や……、自分でもびっくりしましてね。条件反射です」

 訳の分かるような分からないようなことを言って、俺が言ったように古泉は素直に口を塞いでいた手をどけた。
 何でここだけ素直なんだと、驚いた表情からまだ少し笑みが残っている表情に戻った古泉を見ながら、
 俺は最終攻撃を仕掛けるべく、空いていた左手を、そろそろと下半身へと伸ばしていく。

「ひゃ……う……あ……ひ……」

 左手を伸ばしている間にも、俺は胸を舐め続ける。
 時々甘噛みをすると、少しだけ古泉が拳を握り締めるのが目の端に写る。
 そして俺の左手は、とうとうテントを張ってるそこに到達した。
 目をチラリとやると、古泉の怒張は結構苦しそうだ。まあ、本人は拳握り締めてるもんな。
 とりあえず、俺は予告なくそこを擦ってみた。

「うあっ!」

 唐突に快感が襲ったのか、古泉は呻き、表情は笑みが消え、歪んだ。
 さすがにこれはキタらしい。やっと砦は陥落したようだ。
 それでもイカなかったのは、何だ結構我慢強いのか、こいつは。

「はぁっ……いきなりは反則ですよ。ちょっとヤバかったですね」
「言っただろ? 今日の俺は暴走するかもしれないってな」

 古泉の声は少し震えている。
 俺は答えながら、古泉のベルトを外し、トランクスごと服を脱がす。
 ちなみに上半身はそのままにしてある。いちいち脱がすのが面倒なのは、この際放っておいてくれ。
 そのまま直に古泉の怒張に触れる。

「ぐっ……!」

 耐えるような、呻き声が漏れる。俺はいつもやられているように唇を耳元に寄せて、囁く。反撃だ。

「さあ、どこまで耐えられるかな……」

 最初はゆっくりと全体を擦るように撫でる。そして掌全体で包み込むように上下に扱く。
 それだけで、古泉の体はビクンと震え、拳を更にギュッと握りしめた。

「あっ……うぐっ……や……はっ……!」

 手を動かしながら古泉の剥き出しの肩に顔をのせ、時々口付けながら、そのまま古泉の表情を観察してみる。
 俺の呼吸も荒くなってるから、喋らずとも囁くように耳朶に俺の息が当たって震えている。

耐えるような歪む表情と、快楽に溺れる恍惚の表情をごちゃまぜにしながら、古泉はハッハッと吐息を漏らしている。
 そこにはいつもの笑みは影も形もない。その代わりめちゃくちゃエロイ。ヤバイな。
 俺以外にこの表情を見たヤツはいないだろう。まあ、これからも誰にも見せるつもりもないが。
 ここまできたら俺の暴走はもう止まらない。

「どうだ、古泉……さすがに降参か」

 俺はスパートをかけるように更に上下に強く扱きつつ、亀頭を親指でぐりぐり弄びながら、意地悪そうに囁く。

「やっ……あぁ……くぁ……も……ダメ……イク……!」
「いいぜ……イケ」
「イ……アァァァァァァ――――!!」

ドピュッドピュッ、と盛大に俺の手と床に精液を放出し、古泉はイった。

「ハ……ァ……は、ぁ……はぁ……はぁ……」

 荒く呼吸をしながら、くたっと力が抜けた古泉はズズズと壁にもたれながら膝から崩れ落ちていく。
 その表情は完全に恍惚そのままだった。ついでに何故か笑顔だ。こんなときでも笑うのか、お前は。

そりゃ、あれだけ我慢したら気持ちいいに決まってる。我慢した分気持ちよさも倍増っていうのかね。
 ついでに俺も結構頑張ったんだが。というか今も頑張っている。

「はぁ……はい、……ものすごく気持ち良かったです。ありがとうございました」
「大丈夫か。俺は結構ヤバイが」

 感謝されて悪い気はしないが、俺がしゃがんで目線あわせて、覗き込むように言ったことは事実だ。
 大体あんなエロイ格好を見せられて耐えられることができるのが不思議なくらい、俺は興奮している。
 というか、これ以上何かやると確実に理性が吹っ飛ぶと思うんだが。
 これで、理性が吹っ飛ばない自信がある方はぜひご一報頂きたいね。
 少しは呼吸が落ち着いてきたらしい古泉を見つめながら、俺は耐えていた。
 俺の視線に気付いたのか、古泉は元の爽やかさにどことなく妖しさを湛えた笑顔で、

「もう大丈夫です。次はあなたが気持ちよくなる番です。……一緒にね」
「……言っておくが、さっきよりも暴走する可能性大だぞ」

 これが本当に最後通告だ。そう思いつつ、古泉に視線を送る。

「いいですよ。……どうぞ、ご自由にしてください」

吐息混じりのその言葉で、俺は次の行動を開始した。
25 古キョン 22の『一週間ほど前に見当違いの愛を告白』
「あなたが好きです」

夕暮れの部室でそう言った時、古泉は、何てことない顔をしていた。
これくらい何でもない。こんなこと当たり前だ。
それについて来られない、それを拒絶する、あなたの方こそ異常だとでも言いたげな顔だった。

「……は?」

凍り付いていた俺の頭から、俺ではない誰かが返事をする。
短く漏らされた驚愕の声に、古泉は凡そ正常とは思い難い愛を再度繰り返した。
あなたが好きです、あなたが好きです。
あなたに僕を理解してもらいたい。
あなたに僕を受け入れてもらいたい。
あなたを抱き締めたい、あなたにキスしたい、あなたを抱きたい、あなたを……

「…めろ、やめろよ!」

鬱々と零れ落ちる呪文のような告白を俺は勢いよく椅子から立ち上がることで遮った。
もう聞いていられない。頭がおかしくなりそうだ。
少なくともこれ以上続けるようなら、正当防衛としての暴力も辞さないつもりだった。
しかし俺の持ち得る限りの敵意を向けられているにも関わらず、正面に腰掛けている古泉は冷静そのものだった。
いつも通りの裏が読めない笑顔を浮かべて俺をじっと見つめている。

…鳥肌が立った。寒気のようなものすら感じる。
嫌悪というより、それはむしろ恐怖だった。
底知れない不安を古泉から感じる。

無意識の内に両腕で自分を抱き締めていた俺の前で、古泉はひどく緩慢に立ち上がった。
思わずびくりと肩を震わせて後ろに引く。

「来る、な」

笑顔のまま歩を進める古泉を、俺は追い詰められた鼠のように後じさりながらどうにか制止しようとする。
その内背中が壁にぶつかったが、尚も逃れようと俺は横にずるずると流れていった。
古泉は全て承知の顔で俺との距離を狭め続ける。

とうとう部屋の隅に追い詰められた俺の前に、古泉は立った。余裕の表情だ。
首筋をちりちりと炙られるような危機感に急き立てられ、俺は闇雲に手を振り回した。
と、その手を瞬く間に捕らえられる。ぞっとした。冷たい手だった。古泉の目と同じだ。

「つかまえた」

笑う古泉の顔。ダメだ、と思った。この目を見てはいけないとも。
壁に縫い止められた手首ががくがくと震える。
恐い。

あからさまに怯える俺に、古泉の顔が、僅かだが曇る。
どうしてわかってくれないんですか、とその口唇が動いたような気がして、俺は呆然とした。

「僕はあなたを愛しているのに」

古泉の指が俺の手首にぎりぎりと食い込んで赤い痕を残した。
まるで縄をうたれたような、むごい痕だ。
痛みと恐ろしさで混乱する俺に古泉が自分の口唇を優しく押し当てる。
目に、頬に、口唇に。
その一方で、空いている手は抵抗もできない俺のシャツを乱暴に開いている。

「愛しています」

俺はどうすることも出来ず、古泉の冷えた指が自分の肌に直接触れる感覚にただ慄いた。


古泉は間違っている。
それでも繰り返される愛の言葉。
聞き入れるまでやめないとでも言いたげな古泉の声に俺は首を振ったが、それは懸命にこの場から逃れようとする仕草と大差なかった。



24 古キョン
ハルヒ「じゃあ…………2番の人!1番の人にキスをして!」

またとんでも注文を星印のついた割り箸を持ったハルヒがしてきた
もちろん、普段こんなお願いをしてきたら即座に却下することであろう
ただ今は察しの通り王様ゲームの真っ最中だ
それに俺の番号は1番

えーと、もし2番が朝比奈さんなら言うことない、ハルヒー、グット・ジョブ!
長門でもまあ………全然構わない
妹なら……それはそれで嬉しいかもしれない

朝比奈さん「2番………誰………?」

朝比奈さん、あなたは2番ではなかったのですか

古泉「どうやら、僕のようですね」

おいおい、ふざけんな
こんな時までスマイルが輝いてる
夏休み中マ○ドナルドでバイトでもしていやがれ

古泉「王様の命令ですから……従わなければ…………」
ハルヒ「そうよ!王様の命令は絶対なのよ~~!!」

古泉の柔らかい唇が俺の唇にそっと触れる
古泉はなかなか俺を離そうとしない
それどころか下を挿れてきやがった
さすがに俺は無理矢理古泉をやめさせた

ハルヒ「ちょっと!まだ途中じゃない!」

うるさい、命令には従ったはずだ

妹「キョンくん顔真っ赤ーーー」
古泉「ふふ……照れているんですよ」

いっそこいつを殴ってやろうか、などと考えていると古泉が俺の耳元で囁いてきた



古泉「つづきはみんなが寝静まった後で……………ね」

23 古キョン
「キョン君、気がつきましたか?」

目を覚ますとそこに古泉の顔があった。
なぜか体の自由がきかない・・・・ 頭がぼんやりとして明確ではない。
背中が妙に痛む。  ・・・・・・そうか。 俺はハルヒと崖に落ちたんだったな・・・。

なあ・・・、古泉。   ハルヒは・・・無事なのか・・・?

「ええ、あなたがクッションになったおかげで無事だったようです。 無事に保護しましたよ。
 それよりもあなたの方が重症ですから、今はゆっくりと眠っていてください。」

そう言うと古泉は俺の肩を掴み、ゆっくりとベッドに押し戻した。
心地よい布団の温もり。
まどろみの中、確かに俺は唇にやわらかい感触を感じていた。

・・・どれくらい時間が経ったのだろう。 目を覚ますとそこに古泉の顔があった。

「お目覚めですか、キョン君。」

・・・お前、なんか呼び方が違うぞ・・・。 それに顔が近い。 離れろ。 その笑顔はよせ。 あと、ここはどこだ。
頭を押し戻そうとするが力が入らない。 俺は古泉の胸に頭を埋められてしまった。

「ここは船室ですよ。」


「実は、あなたに大切なお話があるのです。」

「あなたは崖から転落した際にかなりの重症を負いました。
 命に別状はありませんが、しばらくは体の自由がきかないでしょう。
 けれども心配は要りません。私の組織の力で元通りになりますよ。」

・・・冗談じゃない。 学校は、妹はどうなるんだ? 畜生。  この狭い部屋から出してくれ!

「お-い、古泉。 何をやっているんだ?」

扉の向こうから声が聞こえてきた。・・・それは間違いなく俺と同じものだった。

「今飲み物を取っていきますから、もう少し待ってください」

そう叫び返すと、古泉は俺に満面の笑みを浮かべ耳元でささやく。

「崖下に落下した際、涼宮さんは傷ついたあなたを見て、たいそうショックを受けていました。
 そして・・・もう一人のあなたを作り出したのです。 自分のせいで傷つくことのなかったあなたを。」

・・・冗談じゃない。 俺はここだ! 誰か!

「それにしても幸運でした。 再び気絶した涼宮さんが気がつく前にあなたを発見できたのは。」

・・・何を言っているんだ、古泉。

「キョン君のことは諦めていたのですが、まさかこんな機会が手に入るとはね・・・ ふふふっ
 心配しないで、あなたの代役は彼が務めてくれますよ。」

「これからじっくりと、僕の色に染めてあげますから・・・。」

そう言った奴の目の奥は、 静かに燃えていた。




22 古泉×キョン
俺は半ばまろびでるようにしてSOS団の部室から逃げ出した。
走りながらすぐに鞄を部室に置いてきたことに気が付く。
あの中には自転車の鍵が入っている。
しかし今更引き返すほどの余裕も余力もなかった。
あの部屋には死んでも戻れない。少なくとも一人では。
なぜってあそこには、あの超常現象の溜まり場みたいな部屋には、古泉がいるからだ。

なんでこんなことになんでこんなことになんでこんなことに。
頭の中で無限に繰り返される言葉は、まるで誰かが俺に後悔のリストでも読み上げさせているかのようだった。
上靴の片方脱げている足を引き摺るようにして、俺はがむしゃらに廊下を逃げ続けた。

「どこへ逃げても無駄なことです」

古泉の高くも低くもない声が長い廊下を反響しながら追ってくる。
それが鼓膜に触れた途端、恐怖で胃の中が引っ繰り返ったような気がした。
足が縺れて、うまく動かせない。
そのまま滑り込むようにして俺は倒れた。
恐怖が全身を縛り付ける。
馬鹿やろう、立ち止まってる場合か!
頼む、立ち上がれ、頼む、頼む、頼む──────

「ね、無駄だって言ったでしょう」

ダメだ。逃げられない。

それでも往生際悪く十本の指で藻掻くように古泉から遠ざかろうとする俺を、悪魔のような顔をした超能力者は軽々と抱き竦めてやにわに廊下の壁へと叩き付けた。
後頭部を激しく殴打して一瞬何もかもを手離しかけた俺を、古泉は穏やかな笑顔で覗き込む。
同時に一見優男ふうの両腕が顔の両側に落とされ、それ以上の世界を遮断した。
古泉のつくり上げた檻の中で、俺は朦朧とする意識を必死に繋ぎ止めようと口唇を動かす。

「お願いだ…もう、こんなことは、やめてくれ………」

古泉は俺の切実な懇願に対して一層嬉しそうに微笑んだ。
幸福そうにも見える。
どうして。

今は心底嫌悪してやまないその顔を睨み付けたつもりだったが、気付けば視界の半分がぼやけていた。
ああ、泣かないで。そんな顔をさせたいわけじゃないんです。
演技めいた大袈裟な口調で俺の眦に口唇を押し当てた古泉を、俺はそれ以上直視できずにきつく目を瞑った。
お前の言っていることは何もかも嘘だ。そんな幸せそうな顔をしておきながら、何を今更。
古泉一樹は歪んでいる。腹の底から。心の底から。

…それでもついこの前までは、俺たちはうまくやってきたんじゃなかったか?
一週間ほど前に見当違いの愛を告白してからすっかり豹変してしまった古泉の顔に、まだ俺は諦めがつかないでいて、何度酷い目に合わされても性懲りもなく以前の面影を探している。
しかし古泉にとってはそれすら俺の弱みにしか見えないのだろう。
なんでだよ。掠れた声で訴えかける俺に、古泉は微笑みかけた。

「愛しているからですよ」

殊更ゆっくりとボタンにかけられた手を振り払う気力も無いまま、俺は目の前に迫る古泉の顔を虚ろに見つめ返した。
絶望がただでさえ狭い胸を圧迫して呼吸さえ儘ならない。
既に大分前から熱くなっていた目頭から、遂に頬を滑り落ちたものが何であったか、こいつはきっとその意味すら真に理解できてはいないに決まっていると思った。



21 古泉×キョン
浮かんできたので書きます
孤島症候群での妄想短編小説

遊び疲れて、今にでも熟睡出来そうだ
電気は最低限の明るさな為、俺はうとうとしていた
隣のベッドに横たわる古泉は寝ているのだろうか。と気になったのだが
確かめるのに瞼をあげるのが面倒だから、直ぐにどうでも良くなってくる
徐々に意識が遠ざかって行く感覚を感じ、眠りにつこうとするのだが
「っん…?」
耳朶が少しくすぐったく俺は目を薄く開けるとみしった男の顔が。
その男の顔を見てしまい俺はすっかり目が覚めてしまった
目の前にいるのは
「古泉……」
無駄に微笑んでいるこの男は何故か俺の隣に横たわり
さり気なく服に手を突っ込んでいる
「おまえ…人が寝ようとしてるのに何してるんだ」
すると古泉は笑顔を保った侭
「添い寝です。あぁ…起きてしまいましたか。耳朶を舐めたのが不味かったのでしょうか…
このまま寝ているキョン君の躯に悪戯でもしようかと思ってたのですが」
残念そうに目を伏せ
「もしかして、あなたが起きたのは…」
舐めたのが原因で感じちゃいましたか?と笑う
先に言っておくが、俺は断じて感じては居ない
寧ろくすぐったさを感じて起きたのだ
舐められるなんて、しかも人が寝ている間に悪戯とかよく分からん事を
しようとするなんて、最低だとしか言いようが無いぞ。古泉

「いい加減、手を仕舞ってくれないか?」
何時まで俺の服に手を突っ込んでいるつもりなのだ。
すると古泉は無言で俺の服に突っ込んでいた手を戻すのだが
「っん…」
やってしまった。
少し、声を出してしまった
自分の失態を心の中で責める
「やっぱり感じちゃいましたか」
と古泉は笑い
「今ので興奮しました?」
していない。するわけ無い。
古泉が不意打ちなのがいけないだろ
それ以前に手つきがいやらしい。
興奮しているのは、お前だ。古泉
「今日するのは嫌だ」
明日も朝が早いし、今日はもう疲れた
何より
「隣に聞こえるかもしれませんしね」
俺の心を見透かしたように古泉が呟く
そして隣に居た古泉はいつの間にか俺を押し倒している形になっていた
これは、非常に、不味い
やる気満々な古泉一樹
「だってあなたは何時も冷静なくせに、する時だけ意外にも可愛い声を出すんですよね」
だから隣に聞こえたら凄く恥ずかしいですよねぇ…と古泉は何ともなさそうに微笑み
「声だって抑えられますよね?…もしかして、抑えられない?」
分かってるくせに
こういう時だけ意地悪な古泉
俺だって我慢出来ない事ぐらいあるんだ
睨むと古泉は冗談ですよ。とお決まりの台詞を吐き
「可愛いです」
キョン君と耳元で囁かれ俺は観念する事にした
古泉の体温を感じながら、隣に聞こえない事だけを願うのであった




20 キョン×古泉

「いい加減にしろ」

普段の自分の声より聊か低く響いた。
古泉の顔からいつもの笑顔が消え、目を見開く。
その瞳にうっすら涙が浮かんでいる気がしたが、目はすぐに細められた。
いつもの爽やかスマイルだ。
「何のことです?」
分かってるくせに。
「こういう・・・キスとかするのをヤメろつってんだよ・・」
先程まで古泉の唇が重なっていた自分の口を手の甲で拭って、
乱れたネクタイとボタンを直す。
この作業を何度繰り返しただろう。
「大体、ハルヒにバレたりしたら世界が―――」
ヤバいんじゃないのかよ。
「・・・・」
どうして何も言わないんだ。

それとも、言えないのか。
「僕が貴方じゃないと駄目だからですよ」
「・・・・・何だそれは、プロポーズか?」
それにしても古すぎる台詞だがな。
「そう解釈して頂いても構いません」
や、構えよ。そこは構っていい所だ。
「僕がキスするのは駄目ということは、キョン君がしてくれるんですよね?」
何でそうなるんだよ。
俺の意見は軽く流されたようだ。
古泉の瞳がゆっくり閉ざされて、沈黙が始まる。
「・・・・・・っ・・・」
沈黙が苦しい。殺風景な部室に、俺の口付けを待つ男がひとり。
そんな危ない状況に居る俺、キョン。

・・・・多分、そのとき俺に誰かが乗り移ったんだ。
そうとしか思えない。
気づくと古泉の後頭部に手を添え、そのまま引き寄せていた。
「んっ・・・ぅ」
唇が合わさると、古泉聞いたことの無い高さの声を出し、俺の体に手をまわした。
暫し感触を味わった後、俺は目を開いた。

――――一体何をしてるんだ俺は。

自分が言ったことと矛盾している。

「こっ・・・これでいいんだろ」
「まだですよ」
体に回された腕に力が入り、抜け出せない状況が作り出された。
「なんっ・・・ヤメろ馬鹿」
「何焦ってるんですか?」
古泉は悪戯っぽく笑うと、俺の胸に顔を埋めた。
剥がそうとするが、適わない。

「心臓って、こんなに早く動く物でしたか?」
自分で胸に手を置いて確かめる。
古泉の言うとおり、異常な速さだ。
顔が赤くなるのが自分でも分かる。
「もう分かった」
今俺が、おかしくなってしまっている事がよくわかった。
男を・・古泉を見てドキドキしている、おかしい人だ。
俺はおかしい。
今、古泉に触れたいと思ってしまっている。
これが一過性のものであることを切に願いながら、胸で蹲る古泉の額にキスを落とした。

古泉は驚いた顔で俺を見上げた後、普段以上の笑顔を見せた。
「僕初めてなんですよ、優しくしてくださいね」
笑顔で囁く。
冗談なのか本気なのかはよく分からない。
俺はゆっくりと古泉を押し倒し、今度は唇にキスをした。
「キョン君・・・好きですよ」
返事はせず、黙ったまま古泉のカッターシャツの中に手を滑り込ませた。






19 古泉×キョン
一応設定は付き合ってる事前提に。


四限目の終了を告げる鐘がなり、待ちに待った昼飯の時間が訪れた
だが
「無い…。弁当が、無い…?」
確かに持ってきた筈だ
弁当を忘れる程俺は間抜けじゃない
第一自慢では無いが俺は弁当を忘れた事など一度も無いのだ
その俺が忘れるなんて。
一瞬盗まれた?と言う馬鹿な考えが浮かんだが
直ぐにそれは消えた
誰が俺の作った弁当を食うのか
そんな物好きな奴居るわけ無いだろう
俺は溜息をついて、騒がしく鳴る腹をさすった
仕方がない。食堂に行くしか無いだろう
金が少し勿体ない気もするが、腹が減って死にそうになるよりか良いだろう
教室を出ると、余りみたくは無かったニヤケ顔の其奴が
腕を組みながら壁に倚っ懸っている
「古泉…」
どうせなら可愛い癒し系な朝比奈さんが見たかったんだが…
まぁハルヒじゃないだけマシか。

「おや、嫌そうな顔ですね。キョン君は何処に行くんですか?」
トイレ?と微笑み、そして
「トイレなら僕もついていきます。いいですねぇ…連れション」
其処までお前は連れションがしたいのか。
谷口あたりでも誘ってしてればいい
「あなたと一緒にしたいんですよ。僕は」
あっそうですか。と受け流し、古泉を無視して歩き出す
とっとと食堂に行って飯に有り付きたい
「待って下さい。…で、本当に何処に行くんですか?」
何故に行き先を知りたいのか。
其処まで教えて欲しそうな言い方されると、敢えて教えたくなくなるのが人間だ
無視して歩き出そうとしたが、古泉の愉しそうな声の所為で答えなければならなくなった
「そう言う態度を取るんですか…。僕としては今此処で色々としてもいいんですが」
色々って。
ポジティブに考えても、古泉がする色々な事は大体よくない事だ
仕方なく振り向き
「食堂」
と呟くと古泉は駆け足で此方によってくる
周りに何とも思われないよう巧みに古泉は囁いた
「色々って…何すると思いました?」
答えられず口を噤むと古泉は微笑み
「言えない事でも考えてました?…やだなぁ、キョン君。
こんな公衆の面前で出来るわけ無いでしょう?出来たとしてもキスぐらいですかね」
キスでもお断りだ。
された日には、学校を止めるつもり
「冗談ですよ」とお決まりの台詞を古泉は吐くが
何となく声で分かった
(冗談のつもりじゃないな)
全く笑えない
冗談だとしても

「お前の言いたい事はそれだけか?なら、俺は食堂に――」
「良い考えがあります」
屋上で待っていて下さい。

それだけ言い残すと古泉は人混みに紛れ込んでしまった

(屋上?)

なんでそんな所で待たなきゃいけないのか。
けれど、俺は何故か操られるように屋上へと向かい
指示通り待っていたのである


「お待たせしました」
暫くすると古泉がやってきた
少し息があがっている
(もしかしてこいつ…)
俺の為に走ってきてくれたんじゃないのか?
勘違いでもいい
そう思うと、少しだけ嬉しくなっていつの間にか頬が緩んでいた
古泉の手を見てみると何故か二つの弁当箱

「は、何でお前二つもってるんだよ?」

「あなたと食べようと思って、持ってきたんです」
そう言ってニッコリと人のいい笑みを浮かべ
「お腹空いてるんでしょう?食べて下さい」
弁当と箸を差し出される
自分の食欲に負けてしまい俺はあっさりと受け取ってしまった

「……2個何で持ってるんだよ。可笑しいだろ?」
どうしてもそれが疑問に残る
もしやこいつは見かけに寄らず大食いなのか?
すると古泉は
「禁止事項です」
と気色悪く朝比奈さんのマネをする
しかも声までも
そんな古泉をスルーすると「つれないなぁ…」と小さく笑い

「何だかこうしていると普通のカップルみたいですよね。
端からみたらお似合いでしょうか?」

お似合いもくそもあるか。
第一俺達男同士だ
端から見たら彼女が出来ない可哀想な奴らにしか見えないだろう
最も古泉みたいな爽やかな奴(表情が笑い以外ないけれど)に
彼女が居ない方が可笑しいけど
幸い屋上には誰もいなく、俺達二人っきりだった
学校内で二人っきりになるなんて滅多に無いものだから
俺は何故か恥ずかしくなって少しだけ顔に熱が籠もったのが分かった

お世辞にも美味しいとは言えない料理を食べる
決して不味くは無い
でも美味しいとは言えない
なんて言うか…古泉、お前って本当に不器用だよな
字も綺麗かと見せかけて実はそんなでも無いし、本当見かけに寄らない
「これって古泉が作ったんだよな?」
分かり切った事を聞いてしまう
「ええ。どうでしょうか?あんまり…料理には自信が無いんですよね」
困ったように笑う古泉がどうしようもなく、好きだと自覚した
「いや、美味しいよ。うん」
卵焼きをつつきながら言うと古泉は本当ですか?と少し驚きの表情をみせ
「無理しなくてもいいんですよ」
と苦笑する
「いや、本当に無理してない。食堂で飯喰うよりよっぽど美味しいよ」
有り難う。とお礼を言うと古泉が一旦弁当箱を置き俺に近づき
「そんな可愛い事を言うなんて…反則ですよ?僕、余り我慢できる人間では無いので」
といきなり頬にキスをする
ふ、不意打ちすぎだ。古泉


「っ学校であれ程するなって言っただろ…!?」
赤くなりながらも抗議の声をあげると古泉は白を切るように
「最近あなたが構ってくれないので、つい。キョン君冷たいんですよ
そんなに僕と一緒に居るのが嫌なんですか?」
と頬にキスした事を弁護せずに、不満の声をあげる
「嫌とかじゃない…!寧ろ…」
一緒に居たいよ。 と呟くと古泉が
「このぐらい素直だと嬉しいのですが、でもそんなキョン君も可愛いです」
あんな恥ずかしい事言わなければ良かったと少し後悔したが
弁当を食べる俺の肩に寄っかかる古泉の体温が暖かく
俺は何も言えずにいた

暫く時間が経っただろうか。
そろそろ肩も痛くなってきた頃に古泉が俺から離れる
少し名残惜しかった
「本当は…言わないつもりだったんです」
でも、何だかあなたを見ていると本当の事を言ってしまう。
そう言って古泉はすまなそうに微笑み
「何言っても怒らないで下さいよ」
内容によっちゃ怒るかもしれない。
そう俺は云おうとしたのだが、返事をするより先に
古泉が口を開いたので結局言えなかった
だから俺は怒れなかったんだ

「あなたの弁当を盗んだのは僕です」

は?
一瞬時が止まったかのように思えた
何故古泉が俺の弁当を盗むんだ

「最近あなたが少し僕に対して冷たかったので、つい意地悪したくなったんです。
ああ、でも安心して下さい盗んだ弁当は責任持って今夜の晩飯にしますので
明日弁当箱返しますね。今日の晩飯は豪華です、何たってあなたの手作り料理だから」
今日がクリスマスって感じですよ。と呟く古泉を見ると怒りたくなった
本当に盗む奴が居た。
最近冷たいって…確かにさ、俺もちょっとやりすぎかな。とは思っていたけど
「…古泉が弁当を二個持ってるって事は……おまえ、もしかして。事前に用意してたのか?」
すると古泉が肯定するように頷き ええ、と笑う
「って事は事前に俺の弁当を盗むつもりだったのか。」

怒るの域を通り越して呆れてしまう

「ええ。そうです。でも、あなたと食べるお昼は最高でしたよ」
と一人大満足な古泉
確かに、俺だって愉しかった
だけど
「盗む事は無いだろ…?」
そんな俺の呟きは古泉には届いておらず
あいつは唯愉しそうに微笑むだけであった




end
18
~八話のその後編、キョンの躁鬱~

「…あなたの首筋には一つだけ黒子があるんですね?」
波飛沫が頬や腕に冷たく飛び散るなか、一件落着した話題が途切れた瞬間古泉が笑って俺の首筋を上目遣いで見上げて来る。
なんだ、なんだなんだなんなんだその目付きは。
せめてもう少し普通のいっぱしの雰囲気は醸し出せないのか、古泉よ。
今は海上、涼しく煽る風が古泉、お前の茶色い髪を乱しては妙に白いうなじを俺に見せ付けてくるが、しかし、俺は普通に接しているというのにこの男と来たら。

「…あなたの演技、うまくて驚きました。あれですよ、ベッドで首を締めてきた時」
ああ、そうかい、というか、何故そんなに嬉しそうに話す。さっきから俺の首筋を凝視するのも止めろ。ちくちくするだろうが。

エロにつづく

キョンの躁鬱?

「あなたの演技力もさることながら、僕達の演技も良かったでしょう?…ただ、まさかあのまま本当にベッドで首を締められるとは思いませんでしたが。ましてやその後あんな行為をすることになるとはね…」

顔色一つ変えずに淡々と口から漏れるのは俺を責めているということなのか?
視聴者の皆は腐心に思っていただろうと思うが、昨晩の俺達のいた寝室のあの異様な暗さは、ヘッドランプしか付けていなかったせいである。
あのランプの明度調整は俺がした、古泉をあの部屋に呼んだのも勿論俺だ。事件について話があると言えばすぐに古泉は着いて来た。はからずもベッドのかなりの近さに俺達は爪先を交互に置く様にして向かい合わせに二つのベッドに腰掛けた。
奴の口からさらさらと解き明かされる真相に俺は真剣に聞き入る、振りをした。
そして話が終わったところで腰を上げ、古泉の首筋に手を伸ばし、そのままベッドに押し倒しのし掛かった。
「…で、僕を殺す気ですか?そんなことをすれば彼女の監視が…」

「お前のうなじ、白過ぎる。…みくるちゃんよりな。後、ハルヒのキーパーソンである俺に逆らえば…世界はどうなるか解らない、そうだよな、…古泉」

俺は童貞じゃない。まずは古泉の首筋に顔を埋めながら、Tシャツの上に羽織っている上着を捲った。

「…その通りです。僕はあなたに逆らえません」

本番につづく


「SOS団存続の危機…、仲間割れするわけにはいかないもんな…」

覆い被さった同じ高校生男子の身体はやはり堅い。おとなしく上着を捲られた古泉は薄く微笑んだままの目玉をランプの光に反射させている。
俺のシャツの胸元の飾り紐が古泉の肌に直に揺れて触れる。
抵抗してこない腕がふいに上がり、その紐を緩く掴んで俺の耳元で小さく囁いて来る。これはこいつのいつもの癖だろうが、今は良い意味に働いている。

「…わざわざ胸元を結ばないのは、僕に解かせない為ですか?」

さあ、どうでしょう。俺は男に紐を解かせる趣味は無い。男の指は解いたり脱がせたりする為にあるものだ。
ジーンズを爪先から抜いて、随分と長い足を手で撫でて堪能する。男の身体とは淡白で、案外触るところは限られているもんだ。
白い靴下を下げて丸めて投げ捨てる。俺はサンダルを脱いだだけで着衣している、誰が脱ぐか。いざと言う時言い訳出来ないのはまずい。みくるちゃ…朝比奈さんが来でもしたら、とんでも無いことになる。

「…さっきシャワーを浴びました?香ってますよ…、とんだ計画犯ですね。おみそれしました」

笑う古泉は、普段と何ら変わらない様に見えるが、ただ一つちがうのは全裸だということだった。うなじに掛かる髪をかき上げ、キスしてやると背中に腕を回してくる。
おそらく古泉も童貞じゃないだろう。その予感は俺にとって好都合だった。

挿入へつづく


「…超能力なんか使うなよ、いいな…」

俺も意外と余裕が無い。この島に来た時から計画していたことだったのだから。そうだ、いわゆる確定事項というやつだ。
こんな行為も夏休みの一コマだ。オセロも良いけどな。やはり性衝動は押さえ切れない、例え世界が閉鎖されようともだ。

「…こんな、痛い、酷いですね、あなたは…」

ランプの影になって見えない箇所は今俺と繋がっている。洗面所で貰って来たヘアムースやら乳液やらを活用して肛門を緩ませてから、持参したゴムをきっちり嵌めて、嵌め込んだ。

「古泉…、名前で、呼べよ」

「名前ですね、あなたは………??√⊥∠?…」

お前は長門か?
なんて突っ込みを入れようとしたが、俺は突っ込んでいる場所の熱と感触に大騒ぎでそれどころでは無い。下半身が熱い、キツい、疼く、三拍子揃っている。古泉の肛門は超能力が働いているのか、そこはとんでもない名器だ。

「…もうすぐ終わるみたいですから明かしますが、このセックスは全世界に放送されています」

俺は恐怖と興奮でどうにかなりそうだった。今、なんと?

「…実は涼宮ハルヒの存在はもう既に世界中に知れ渡っているんです。あぅっ、ですから、SOS団行くところ、全て監視されているんですよ、あぅっ、この屋敷全部の部屋にカメラが仕掛けてあります…ああっ」

俺は何も聞かない振りをして、腰を振り続けた。ハルヒが、世界が、知ったこっちゃない。俺はただ獣の様に古泉、お前を喰う。

「まあ、とにかく昨夜は気持ち良かったでしょう?」

俺は船の縁に凭れながら、ちらりと再び古泉のうなじを見た。
やはり、キスマークはついていない様だ。
まぁ、安心した。

「…全世界生放送ってのは冗談だよな?」

「涼宮さんは信用するのに、僕は信用に値しないみたいで、何だか嫌だなあ」

俺は普段は何喰わない顔で日常を送りたいんだ。昨夜やったあとは、小説孤島の鬼に出て来る主人公みたいに白髪になってるかと思ったが、俺の神経は意外と図太かった様だ。
いやいや、気持ち良かったですよ。古泉の身体は。絶対言わないけどな。

「…昨日気になっていたあなたの黒子は、やっぱりきちんとあったんですね。安心しましたよ、ただ、毛が生えているとは…ね」


17
一体全体どうしてこんなことになってしまったのか、
神というふざけたヤツがいるならいますぐ張り倒して問い詰めたい。寧ろ全力で謝りたい。
清く正しく生きてきた俺にこんな非道い仕打ちをするほど神とかいう職業は暇なのだろうか。
今すぐ転職をオススメしたいが、未来人、宇宙人、超能力者などのように
目に見える存在ではなく、ぶっちゃけ居るかどうかも怪しい存在に
そんなことをオススメできるような非人間的な力は残念ながら持ち合わせていない。
ああ、お願いだから俺まで一般人という素晴らしく平凡なカテゴリーから除外しないでくれ。
マジで、頼むから。

ジョン・スミスの憂鬱

“バケツをひっくり返したような”とはよく言ったもので、滝のように窓を流れていく雨が
激しい音を立てて校庭の泥をさながら洗濯機のように勢い良く洗いまくっている
春も過ぎた五月の陰鬱な空気が取り巻く蒸し暑いある日、事件は起こった。
いや、例の如く事件をハルヒが掘り起こしたというか叩き起こしたというか、とにかくそんなようなものだ。
ずっと起きずにそのまま不発弾のように眠っていてくれればいいものを・・・
自己主張激しいヤツだな、事件というヤツは。迷惑極まりない。
きっかけは教室の片隅に放置されていた一冊の漫画本だった。
何の変哲もない一般書店で売られている少女マンガに見えるそれを、
ハルヒが手に取り読み始めたのが昼休みに入ったばかりの頃だ。
俺はこの後自分があんなおぞましい事件に巻き込まれるなどと予想することもなく、
ごく普通にいつものメンバーで飯を食っていた。
途中、奪われたハンバーグの恨みを晴らすかのように国木田の弁当から卵焼きを奪い取りながら。


キョン、古泉君にキスしなさい!」
俺は持っていた鞄を盛大に床へ叩きつけたかった。いや、実際俺の手からすり抜けた取っ手は
そのまま筆記具やら何やらの重みで床へと落下し、軽い音を立てて床に落ちたが。
まさにドラマなどで見る“ショックなことを聞くとパンや買い物袋や花束が落ちる現象”を体感してしまった。
事実ショックなことを聴くと手の力が少なからず抜けるようだ。いや、そんなことはどうでもいい。
俺は今すぐに速攻でハルヒの思いつきを止めなければならないんだからな。
「はぁ!?何故俺がそんなことをしなければならないんだ!」
「いいからしなさい!団長命令よ!」
「そんなことを言われても聞けるわけがないだろうが!ワケを言えワケを!」
聴く耳持たないのは俺もハルヒも一緒のようで、このままでは押し問答を続けるだけだろうと判断したが、
如何せん内容が内容だ。大人しく聞いてやるわけにもいかない。
「キョン君、あれ・・・」
麗しの朝比奈さんが指差したのはカラフルな装丁の少女マンガだった。
ただ普通の少女マンガと異なるのは、表紙に描かれている人間が華やか煌びやかな
女子高生ではなく、見渡す限りオールスター学ラン男子感謝祭状態であることだろう。
あまつさえその表紙の人間は古泉のように爽やか堅実嘘臭いの三拍子揃った笑顔を浮かべている。
まさか、それは・・・
「学校には一組や二組くらいボーイズラブな男子がいたっていいじゃない!」
やはりそれは、俺達にとっては限りなく遠い世界の出来事を女子の豊かな妄想力・・・いや、想像力で
好き勝手描きまくった近未来的恋愛風景のマンガのようだ。
何故こんなものがハルヒの手の中に落ちてしまったのだろうか。他のヤツなら害はなかったというのに
因果というものはこんなにも恐ろしいものだったのだろうか・・・
ハルヒがそれを手にしてしまったからには目の前で犠牲になるのは100%俺と、あとオマケ程度に古泉。
確実に俺、そして究極に俺が巻き込まれるのだろう。勘弁してくれ。

「古泉君でもいいわ!キョンにキスしなさい!これは団長命令よ!」
そんな太陽でさえも裸足で逃げ出すような期待で光り輝く笑顔で微笑まないでくれ。
俺は眩しいどころか意識が遠のいていくような錯覚を感じてきた。ああ、世界が回る、回っている。
「・・・これは、覚悟を決めた方がいいですね」
いつもの胡散臭い笑みではなく、困惑したような微笑んでいるような曖昧な笑みを浮かべた古泉が
俺の耳に小声でぼそりと吐息混じりに呟いた。どうしてこうこいつは必要以上に顔を近づけなければ話ができないのだろうか。
もう少し距離をとって話してくれても聞き逃したり撃ち殺したりしないんだがな。
「・・・なんだ古泉、いつもながらに顔が近いんだよ・・・いいから離れろ」
「涼宮さんの意識下で異空間が形成され始めています。これは覚悟を決めなければいけませんよ」
真顔でわけのわからないことをのたまう古泉に軽く眩暈を覚えながら俺は開き直ったように言葉を紡ぐ。
「・・・なんだ、お前とこの陰鬱な空気の中でディープキスを交わせば
この気まぐれな団長様のご機嫌は上昇するってことか?俺は確実に御免だがな」
「いえ、そうではありません。気付いていますか?この部屋の空気がぐるぐると渦を巻いていることに。
もう既に異空間が形成され始めてています。ということは・・・」
古泉は少し間を開けて、やがてゆっくりと口を開いた。俺はその口から予想だにしない
衝撃的事実が漏れ出すことを想定していなかった。できれば嘘であって欲しいと強く願いまくりたい程の予言を。
「涼宮さんが読んだマンガの通りにしなければ、僕達はそのまま同性愛者に改変されてしまうということです」


16. 8の続き
「ったく、あいつら本当頭が固いわねっ!」
どうやら教師等に呼び出されたらしい
当たり前だハルヒ、お前がやることは大抵学校の評判を落とす事だからな
そろそろ校長、胃潰瘍になりそうだぞ。程々にしておけと
言っておきたけれど口に出してしまえば
自分に面倒な事が起こるのはもう学習済みだ
だから俺は何も言わず心の中でハルヒに注意をする
すると爽やかな笑顔を保った侭古泉は
「大変ですね」
と明らかに棒読みな台詞を平気で吐く
まるでさっきの事が無かったかのように
青白い顔をしている俺に気づいたのかハルヒは眉を顰め、腕を組んだ
「どうしたのよ…。あんたらしくない顔ね」
何かあったの?と言いたげな表情だ
(何があったって…)
言える訳無い
古泉に告白され、危うく犯されそうになっただなんて
「何でも無い」
否定するがハルヒは納得してない
その証拠に眉を顰めた侭だ
「…古泉君と何かあったの?」
…妙な所で勘がするどいな、ハルヒ
心の中でこいつを讃称し、古泉の如く作り笑いをする
安心させる為に。
バレない為にも俺は自分自身、そして古泉以外の全員を騙さなければならない

「何でも無い。それよりハルヒ、今日も呼び出しを喰らったのか?」
話をすり替えるとハルヒはそれ以上追求するのを止めたのか
教師を愚痴をこっぴどく言い始める
分かっているのかハルヒ
お前がそんなだから教師達も大変なんだぞ。と教師達に同情をした


その後朝比奈さん長門さんもやってきてメンバーが揃い
朝比奈さんの美味しいお茶を飲んで、何時もの自分をどうにか保とうとした
古泉の存在を気にしないよう。
古泉とあった事等、忘れたかのように。
自分自身を偽るとはこう言う事なんだな。と客観的に思いながらも
此から先どうなるのだろうかと言う不安は残った侭だった


「あーっ、もう今日も収穫0ね。帰るわ!」
ハルヒの声が部活終了の合図を告げる
鞄を背負い、朝比奈さん達に「じゃぁ」と挨拶して
急ぐように駆け足で、俺は部室から出て行った
古泉の顔は、何故だか恐くて見れなかったけど
早めていた足を止め、一度後ろを確認してから
ゆっくりと階段を下りる
(今日は色々な事があった)
古泉、俺はお前の気持ちが分からない
お前が何でそんな態度を取るのかも分からない
キスだって男同士で気持ち悪いだろう?
本当に…参った
不意によく分からない涙が滲むのを感じて
どうしようも無く、泣き出したくなった
古泉は前々から変だと思ってたけど
まさかあっち方面に変だとは。
裏切られたような気持ちになってしまう
けれど涙は滲むだけで、流れなかった
「……弱気になりすぎだろ」
そんな自分を叱咤し、いつの間にか止めていた足を歩ませる
こんな時こそ、切実に朝比奈さんの癒しが欲しかった
全身全霊の癒しを俺に。と馬鹿な事を考えながら下駄箱へと向かう

「キョン君」

聞きたくもない声
誰の声だか分かっている
その声を無視して、又歩き出す

「無視…ですか?」

いつもの温暖な声なんて嘘のように淡々とした声
長門さんを連想させるかのような感情の籠もらなさだ。
嫌な汗が流れるのを感じて進める足を速める
瞬時、肩を強く掴まれて古泉の方を向くしか無くなった
古泉の目が見れず、俯いてしまう
そこまで俺はこいつを恐怖の対象としてみているらしい
「…あなたらしくありませんね」
逃げるなんて。と明らかに嫌みを含んでいる
「っだって仕方無いだろう?お前があんな事するから…」
今まで通りに古泉を見れる訳無いだろう…!?と声を荒げると
片方の手で口を押さえられてしまった
不満の声も全て間抜けな声になってしまう為俺は仕方なく喋るのを止めた
「困るんですよ。そんな声を出されたらね…。未だ残っているかもしれないので」
何が残って居るんだ。ちゃんと説明してくれと思うのだが
よくよく考えてみるとハルヒ達が未だ校舎に残っている可能性があるかもしれない
と言う事を指しているのだと分かった

「それよりあんな事ってどんな事ですか?」
そして間を空け
「ああ…、僕があなたにキスをして告白した事でしょうか。
そんな事であなたは僕から逃げるんですか?」
そんな事って
「っお前…いい加減にしろ。そんな事って古泉にとってはそんな事なのかよ?
ああ、もう分かった。お前はそう言うヤツなんだよな。悪いが俺はホモはお断り
だから今後一切、お前を避ける事にする。だからもう…離してくれ」
古泉を信じた俺が馬鹿だった
最初っから見切れば良かったんだ
「自分勝手ですね。あなたを離すつもりなんて更々ありません、あなたを僕のものにしたいんです」
可笑しいとしか思えない発言に俺は唯聞いているしかなかった
こいつの力は意外にも強く、多分俺よりか少し力が強いのかもしれない
突き飛ばす事だって出来るが、した後どうなるか分からない
その後の仕打ちを考えるだけで、俺は抵抗する事すら出来なくなってしまう
「ねぇ、キョン君。この前よりか無抵抗ですね、少し学習能力とやらを身に付けました?」
抵抗するあなたが見たかったのに、と声を和らげる
「ふざけるなっ…」
睨むと古泉は困ったような表情をし、微笑む
「やっと…僕の目をみてくれましたね。」
嬉しいです、と笑い
「愛していますよ」
何でそんな事を言うのだろうか。
古泉、お前は男で
俺も男だ。可笑しいに決まっているだろう?

「古泉…俺は、お前の気持ちが理解出来ない…っ」
駄目だ。自分を抑えられない
「止めてくれ、そう言う風に好きとか愛しているだとか言うのは…!」
「…あなたがそう言う風に言うのは予想していました」
だけど面と向かって言われると…少し、辛いかもしれません。
「古泉…?」
こいつらしくない沈んだ声に目を顰めると
冗談ですよ。と微笑んだ
「それより、もっとあなたと色々な事して楽しもうかと思ったんですが
流石に学校でやるのは不味いですよね。ええ、スリルがあって良いと思いますけど」
一旦間を置き
「涼宮さんにバレてしまったら大変です。…分かりますよね、僕が言いたい事」
微笑んで居た顔がいつの間にか無表情に変わっている
普段微笑んでいるヤツが無表情になると恐怖以外感じらない
「バレたら非常に、不味いんです。
だから…あなたと僕の関係は秘密。他人に漏らしては駄目ですよ?」
ああ、でも他人に僕にされた事なんて言える筈ありませんね。
本当に愉しそうに微笑む
俺は何も言えず、目を伏せるしかなかった

15 古泉×キョン
皆様の暖かい言葉に甘えて投下

「良ーい?今日は王様ゲームするわよ!」

行き成り腕を組み立ち上がって何をするかと思えばそんな事を言い出した。

本当、ハルヒの行動は予想がつかないとつくづく思う。
土日に集合して奇怪現象を探せだの野球をするだの合宿をするだの朝比奈さんとバニーガール姿で宣伝するわで。(朝比奈さんのバニーガール姿は嬉しかったりもするが)


其れで今日は王様ゲームかよ。
何処ぞの合コン会場だ、此処は。


「良いですね、やりましょうよ。」

爽やかな好青年面で言って来るのは古泉。
少し位否定しろ、と言っても閉鎖空間云々ではぐらかされる。


「みくるちゃんも有希もキョンも良いわね?」

こうなる事は鼻から見えてたから別に心の準備も出来てるしな。
俺は軽く頷くと即座にこのゲームでの安全をせつに願ったのは言う迄もない。


「そろそろ遅いし、最後に一回やったら解散にしましょうか。」

あれから幾分と経ち、夕方には欠かせないカラスも彼方此方で鳴き出しハルヒもやっと帰る気が出て来たようだ。
そして俺の安全はと言うと守られ、神様は本当に居るのかもしれないと思えて来た。
この声をもし神が聞いてくれていたとしたら心の底からありがとうを伝えたいぞ、本当に。

「キョン君、ついに最後ですね。」
「寄るな、息を吹き掛けるな、気持ち悪い。」

穏やかにスマイルを必要以上に迫らせ耳元で生温い息を吹き掛けながら囁いてくる。
もっとまともに喋れんのか、お前は。

「俺は早く帰りたいがな。」


そういって数秒、王様は見事ハルヒになった。


「やったぁ!じゃあ、最後だから盛大に行くわよ~?」

何だ何だ何だ。
背筋がビクビクと痙攣を起こした様に寒気がしたぞ?
此れが世に言う悪寒というものなのだろうか。
どうやら、俺は神に見捨てられたらしい…
「えーと…三番が一番のお願いを二回聞く!」

手元に有る棒。
はい、まさしく俺が持っています。
まさしく俺が三番を握っています。

尋常じゃない汗が額を流れてきた。

「俺が、…三番だ。」
俺が持っている番号を呟きながら必死に、正月のお参りの時以上に祈った。

どうか、一番が朝比奈さんであります様にッ!
最後の最後まで神は俺を見捨てないと信じたい。


「ああ…どうやら僕みたいですね。」

終わった…
突如足下の崖が砕けた時の絶望感を一気に感じた気がした。
神なんて居ない、断言しよう。
もし、古泉が好きな奴が居たのなら名乗り出てほしい。この三番と刻み込まれた棒を速やかに譲る事だろう。

「古泉君がキョンに何でも二つ、命令して良いのよ!最後なんだから、遠慮はいらないわ。」

人の気も知らないでハルヒが羨ましい限りだ。

「古泉、後生だからまともなヤツを頼む。」
「ハハ…それじゃあ、合宿の時聞き逃してしまった'好きだ'を聞かせては貰いませんでしょうか?」

コイツに少しでも期待した俺よ、自分で自分の事を言うがお前は馬鹿だ。

「何故またあの羞恥プレイをお前はっ…」

「おや?何でも聞いて貰わないと困りますよ。」

肩をすくめて眉をひそめる古泉の顔は今から何か企んでいる様な悪いお代官様にしか見えなかった。
いや、其れにしか見えない。

「分かった分かった!俺が言えば気が済むなら言ってやるよ。」

「あ、ちゃんと振り向くオプションもお願いします。」

一々注文が煩いヤツだ。
…だが、一度承諾したのは良いものの、やはり男に男である俺が好きだと言うのは気恥ずかしい以上に何か抵抗があるものだ。

「あーもー焦れったいわね、キョンは!早くやりなさいよ!」

そんな事を言われても相手は古泉だぞ?
くどい様だが朝比奈さんなら、何回…いや何万回と光る風を追い越す速さで言ってやろう。

…ああもう何もかも、考える事も面倒になってきた。
言ってやろうじゃないか、其れで気が済むのなら。

「……好きだ」

今の現状を的確に表せば顔から火が出そうだ。
この際ハルヒの大爆笑が聞こえるのは気の所為にしておく事にする。

「頬だけではなく耳まで紅くなってますよ?」

馬鹿野郎。
恥をかかせたのはお前である事は間違いないと思うんですが。

「さて、古泉君。もうひとつ有るけど、どうする?」

ちょっと待て。
あまりの羞恥に忘れかけていたが、未だ此れは続くのか。
此処に居る全員に聞いてやりたい。俺はあと何回顔から火を吹かせれば良い?

「いえ、キョン君も可哀想ですし…今のところはいいですよ。」

…ん?
はっきり言おう。
俺は俺の耳をものすごぉーく疑った。

「其れは本当か?古泉。」
「ええ。」
「本当に本当か?」
「ええ。」

神が今更になって味方をしてくれたのだろうか。俺の恥ずかしっぷりを見て呆れた天使が降臨でもしてくれたのだろうか。もうそんなのはどうでもいい。兎に角ありがとー!

「じゃあ、もう終わりですね。」
此処で正式な終了を、この部室のスイートエンジェール朝比奈さんが告げた。


其の言葉を何れだけ待ちわびた事か!

やっと逃れられるとわらわら帰り出した部員に紛れようとするが、俺の動きは肩を掴まれた事によって強制静止させられた。

「キョン君、ちょっと…」

この肩の犯人は古泉。
やはり顔が近く爽やかなスマイルで言ってきやがった。
何か有りそうな予感は誤魔化し様がない。
お前に天使なんてあり得る筈が無かったな、そうだな。
こう裏切られたのは本日で何度めなのだろうか。


手短に済ませてくれよな。今日は色々と有ってだな…お前なんかと」
「最後のお願いです。キス、してくれませんか?」

手短に済ませる催促をした言葉は思わず空気を振動させた音源を処理した俺の身体の全てを信じられなくなる様なものだった。

待ってくれ。
俺の鼓膜は遂にやられちまっていたのか?
鼓膜よ、誤診を伝えてしまったんだろう?誰かそうと言ってくれ。

「はぁ?…お前は何を‥」

「だから、キョン君。二回めのお願いですよ。先程今は遠慮すると言いましたよね?流石に僕もあの場では言えませんでしたので。」
冷静且つ淡々と言う古泉に俺は唯聞くしかなかった。
何故そんなに正気じゃない事を次から次へと言えるんだ、お前は。

「おや、キョン君は気が乗らない様ですね?」
「当たり前だろう。そ、その…男同士でキキキスだとか…」
「何も可笑しい事はありませんよ?」
「何だ…何ていうかお前は頭大丈夫か?」
「ええ。程々に。別に、好きな者同士のキスは普通の事ではありませんか?」

吐き気、めまい、動悸が一気に襲ってきた気がした。
誰か、俺に養命酒をくれ。

「俺が、いつ、何処で、何時何分何十秒、地球が何回回った日にお前が好きだと言った。言ってみろ。」

「何を言うんですか。キョン君の僕に向ける視線で分かりますよ。」

「ああそうかよ…」

ダメだ。
コイツの可笑しさは真性なのだろう。
だが、可笑しいのは俺にも言えるかもしれない。
何故か其処まで不快感を感じないからである。
何故だ…何故なんだ。
昨日道に落ちていた封の切られていないガムを食べたのがいけなかったのだろうか。
この方程式を解けるヤツは解いて貰いたい。そして学会に発表したのなら間違いなくお前はノーベル賞だ。

「僕はキョン君が好きだから、キョン君からキスをして貰いたいんです。」

そうして古泉はいつもの息の吹き掛かる距離で顎を持ち上げてきた。

心臓が狂った様にして鳴り出した。
頬が紅くなるのも分かる。
まるで出演者を間違えた少女漫画だ。
まさか俺が大抜擢されようとは思いもしなかった。

「接吻すればお前は速やかに帰宅するのか?」
「勿論ですとも。だから…さぁ。」

古泉を信じて良いものか、悪いものか考え様にも頭が上手く回らない。
いや、この状況で正常に回る人類はこの世に居るのだろうか?

追い詰める様に見詰めてくる古泉。
蛇睨みをされたと言うのはこの事か。

俺は、この判断を全てこの状況の所為にしようと思い切って唇を押し付けた。
数秒で終わるかと思ったが、意外にも長く、古泉の腕が俺の背中に回り抱き締めてきた。
反応の仕方が見当たらない。

「っはぁ…」

「キョン君、良かったですよ。」

やっとこさ繋がった唇が離れ、何ともロマンの欠片もない俺のファーストキスは終結した。
何が良かったんだ古泉よ。

極度の緊張で一気に力が抜けてその場に座り込むと鞄を持ち、いつの間にか帰り支度万端な古泉は笑い掛けて来た。

「キョン君は、僕の事好きですか?」

「嫌いよりに好きだ。」

何が起こったかは未だ整理はつかないが、何と無く俺の中の何かの異変には気付いた。
出来れば、気付きたくなかった異変が。

いつまでも座り込む俺に差し延べられた古泉の手を取りながら、延々と其の事ばかり考えていた。


「…いくしっ」

午後の昼下がり、俺は飽きもせず何時もの部室に来ていた。
そして、この為に毎日来ているのかもしれない位に美味い朝比奈さん手作りの茶をすすってハルヒが来るのを待っているところ、不意に見舞われた鼻のムズムズ感に負け、何とも情けない嚔をしてしまった。

「キョン君、大丈夫ですか?」
「はあ…多分」

ギラギラと紫外線豊富な直射日光が差し込む中という状況には似合わないが、一瞬寒気を覚えたのは事実だ。しかぁーし!朝比奈さんのスゥイートボイスを聞いて、ゲームでいう状態回復をした。
ほら其処!単純とか言わない!

「…夏風邪の恐れが有る。」

…と、そうこうしている内に何処からともなくまさに本の虫と化している長門がボソリと呟いた。さり気なく聞いていたのかお前は。
そしてもうちょっと存在を誇示してくれ。

「夏風邪は厄介ですよ、キョン君」

何処からともなく第二弾。
いや、何処からともなく俺の顔の近くに居たと言うのが良いだろう。
厄介なのは理解したから半径1メートル程離れて喋ってくれ。

「夏風邪かぁ…」
「最近気候の変わりが激しいですからね。其れ以上体を崩さない事が懸命ですよ。」

まぁ、そうだな。俺は珍しくも古泉の言う言葉をまともだと思った。
まさかこの後地球規模の大地震やら地球が頭のデカイ宇宙人にのっとられたりはしないだろうか等と適当に有ったノートで扇ぎながら古泉による地球の危機を考えてみた。

「古泉、お前の割には真面目な答えで何よりだ。」
「ハハハ…ですから、油断は禁物ですよ?」
お得意の笑顔で古泉は人差し指を俺の口に当ててき……たぁ!?

言葉にならない声をあげ勢い良く後退した俺をクスクス笑いながら懲りずに古泉は近付いて来る。どんなホスト行為だお前は。
横目でだが、朝比奈さんが笑っているのが見えた。笑ってないで助けてくれよエンジェール!

「本当に面白い動きをしますね?キョン君は…お体を、どうか大切に」

未だ唇に残るあやつの指の感触を緩和出来たなら、と袖で拭っていると突然肩に負荷が掛った。
其れは、微妙に重くて暑さを倍増させる品物。

「古泉、冬なら未だ嬉しいが、たった今迄下敷きで扇いでいたのを見ただろうに。嫌がらせか?」
「嫌だなぁ。夏風邪のキョン君に僕なりの気遣いですよ。」

そう、肩に掛かる重みは奴の上着。
速やかに脱ぎ捨て古泉に返すが、何を思いたってやってきたのかが分からない。
確かに風邪気味だが、暑いというのに。

「キョン君と古泉君は、仲が良いんですね。」

呑気そうに笑う朝比奈さん。また其の笑顔の可愛いこと…ってそんな事じゃなくて、この状況を見てどう計算すれば其の答えが割り出せるであろうか。
まぁ…朝比奈さんだから許すぞ。
俺が甘い事等俺が一番分かっているのだから突っ込みは無用だ。

「ねぇねぇ皆!今度、卓球大会が有るんですって!」

盛大にドアを壊さんばかりと開けるなり大声で提案を叫びながら、ハルヒは入室してきた。
卓球大会…また面倒な事になりそうな事を予想しながら古泉の所為か少しグレてきた様子の夏風邪君に困りながら窓の外を眺めた。
夏風邪君、寧ろ俺の方がグレたい気分だぞ。

其れから話は流れに流れ、結局卓球大会は参加する事になった訳で。
そもそもハルヒが、何処からそんなに情報を集めてくるのかが先ず知りたい。そして突き止めたのならクレームを入れてやりたいものだ。

「話もまとまったし、各自ちゃんと鍛えときなさいよ!明日は卓球場で特訓なんだからね?其れじゃ、解散!」

擬音を使うとしたのならルンルン…いや、ウキウキとでも言っておこうか。今にもスキップしそうな勢いでそう告げると足早に帰って行った。
今日もハルヒは嵐の様だった。

別に残る事も無いので、朝比奈さんや長門に軽く挨拶を終えると下駄箱に向かった。
成るべく古泉に逢わない様に。逢ったらまた何されるか分からないからな。

いつの間にか辿り着いた下駄箱から靴を取り出す。
ラブレターも入ってる訳じゃない、不幸の手紙が入ってる訳でもない。極々一般的な下校の風景である。
だが、幻聴であろうか?
ゴロゴロと雷が鳴ったのが聞こえた。
先程迄あんなに晴れ渡っていたというのに。
「…大雨じゃないか。」

昇降口を出ると、外は大雨。
幾ら未だ梅雨だと言っても天気予報のお姉さんだって晴れと言っているのだから晴れるべきであろう、天気よ。無理だとは分かるが少しは空気を読んで貰いたいものである。
そう、皆様の御察しの通り俺は傘を持っていないのだ。

「キョン君、傘持ってないのですか?」

どんよりと一向に機嫌を治しそうにない天候に溜息を吐きながら眺めていると、背中越しにあまり聞きたくない声が聞こえてきた。背中越しだが、爽やかな笑顔が見える。

「…古泉か?」
「御名答です、キョン君。」

思った通りの良い笑顔で傘を持ちながら近付いて来る。俺はとっさに身構えた。変な事をされるのは御免だ。

「傘なら忘れたよ、見事に忘れたよ。天気予報を過信しすぎな馬鹿だと好きなだけ罵るが良い。」
「またまた…。」

苦笑混じりに笑う古泉。
言っておくが、あの古泉にされた何ともビターなファーストキスの件を忘れちゃいないぞ。まぁ、下手に触れないでおくけどな。

「俺、もう帰るから。」
また俺の唇が奪われたのなら、今度は貞操も危なくなってくる。濡れるのは嫌だが、此処は安全策を取るのが得策だ。

「キョン君!濡れてしまっては風邪が悪化しますよ。」
タイミングが悪かった。
腕をがっしりと掴まれてしまったのだ。古泉、俺は濡れて風邪が悪化しても、酸性雨の影響で禿げがきても、帰宅したい心情を察してくれ。
「そうだ、僕の傘に入って帰りませんか?」
「はぁ?」

雨に濡れないのは嬉しいが、お前の傘に入る=相合い傘じゃないか。何故そうも恥ずかし気もなく淡々と言えるんだ。ある意味尊敬に値する。

「…分かった。分かったから取り敢えず腕を解放してくれ。血脈に悪い。」
「では、決まりですね。」

何故断らなかったのかのお問い合わせは生憎受け付けていない。寧ろ、俺の方が何故だか聞きたいものだ。古泉の凄く嬉しそうな笑顔がヤケに目につく。そんなに嬉しい事なのだろうか、俺との相合い傘は。



「なぁ、古泉よ。」
「何ですか?」
無言の儘随分歩いたが、俺は沈黙が耐えられず口を開いてみた。相合い傘とは、何時も以上に古泉の顔が近くて息が吹き掛かるものだ。此れが朝比奈さんなら…というのはこの際省略しておこう。

「お前はこの前の王様ゲームで接吻を交した時言ったな?俺の事が好きだと。」
「はい。」
「其の理由を簡潔に述べてみてくれ。」

実はずっと気になっていた。お前が同性である俺を好きな理由を。普通なら有り得ない筈の気持ちを。

「…何故でしょうね。気付いたら貴方の事が気になっていた、では不十分ですか?」
「理由になっていないだろうが。」
「恋に理由なんて要らないと思いますよ。好きになったら理由も理屈も要りません。」

何てポエマーな発言だ。聞いてる此方が恥ずかしくなって来るだろうが。然し、いまいち分からないものだ。敢えて俺の一般例を上げるのならば可愛いから、優しいから、とかあるだろうに。

「キョン君には未だ早すぎましたかね。」
と、笑いながら突然立ち止まり、何もする事なくだらけている俺の掌を握ってきた。温かい感じが掌を通じて伝わってくる。
即座に文句を言おうとするも古泉は真面目な顔に切り替え、不覚にも俺は怯んでしまって口籠った。

「この繋がっている手は、キョン君の自由で離す事もこの儘にしている事も可能です。もし、嫌なら遠慮なく離して下さい。」

古泉の瞳は真っ直ぐ俺を射抜き、圧倒させられるばかりであった。少しも、コイツがふざけてなんかいないのが分かる。同時に俺の顔に血が巡っていく。
…そんな瞳で見られたら、離せるモノも離せなくなるだろうがよ。

「ほら、行くぞ。」

いつ間でも合う視線はやりきれないので俺は繋がれた方の手を握り返し、引っ張ると歩く事を促した。視線は、前の進むべき道へ向けた。
自分でもベタな反応だってのは分かるが、こう、実際現実にベタなシーンに出逢うとベタな反応しか取れなくなるものだ。

「分かりました。」

視界の端に見えるのは何時もの微笑みを浮かべた古泉。其れを見て自然と俺も頬が緩んだ。
今一緒に居られる環境が心地良い。
今一緒に居られる事が嬉しい。
何と無く古泉が語る恋の理屈が理解出来た気がしないでもなかった。

「好きですよ、キョン君。とても貴方は可愛い。」
「可愛いは余計だ。…その…、俺も其れなりにお前が好きだ。」

雨は大分小雨になり、今にも太陽が出て来そうな程に回復している。周りから見た俺達はとてつもなく変人に見られるだろう。だが、そんな事を気にしては負けな気がするので無視する事にしよう。

そして俺達はまた、家迄の道を歩き出した。