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閉鎖空間な保管庫
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49 キョン古(45の古泉視点)
いつもはゲームで負け戦ばかりしている僕だが、ここぞと言う時の勝負には負けたことが一度もない。
今回だってもとから勝算はあったのだ。

僕はそもそも容姿に少なからず自信がある。
今までも女性はもちろん同姓からも「嫉妬の」とは呼べない種類の視線を向けられる事は何度と無くあった。
その粘度を持つ性質の視線を向けられたとき、僕が感じるのは何とも言えない嫌悪と戸惑い、
わずらわしさばかりだったのに。
彼は違った。

彼はとてもそっけない人だった。
何に対しても基本的に無関心のポーズをとり、それは彼がそっけなく接しない人物を探す方が難しい
と言うほどで(朝比奈さんくらいだろうか)僕に対しても例外ではなく、むしろ一際そっけないのでは
ないかと感じられるほどだった。
それでも時折彼が勝手に吸い寄せられたとでも言うかのように僕を見ている事があるのに気づいた時、
僕が感じたのは嫌悪でも戸惑いでも無く、歓喜だった。
そしてその視線には今まで不特定多数の人々から受けたそれと同じように、無意識に僕にむける
性的な関心が含まれているのだということに気付いた時、絶対に無意識のままではいさせない。
必ず自覚して、認識して、受け入れさせてやると決意していた。


彼の前ではそれが標準装備になりつつある笑顔をわざと一瞬やめてみたり文芸部部室に顔を出す
ときには(つまり彼の前に出るときには)いつもより見た目に気を使ってみたり上目使いに見上げて
みたり。夏の日焼け対策までするようになった。
彼はそのうち面白いくらい過剰に反応してくれるようになり、時には真っ赤になって顔をそらすこと
さえあるほどだった。(反応が過敏すぎて顔が近いなどと怒られる事もしばしばあったが、
要するに照れ隠しだろう)
何しろ、彼はかなり面食いだ。
自分の容姿にここまで感謝した事は無かった。

戦局は俄然我方の有利にある。
僕はそう確信していた。
あとはもうチャンスを待つのみ。

意外にもそれは案外あっさり訪れた。
涼宮さんが開店したばかりのケーキ店に食べに行くと宣言して朝比奈さんと長門さんを連行して行ったのだ。
男二人も随行を命じられたのだが、ファンシーな店内にひしめいているであろう女性の団体の中で
手持ち無沙汰に居場所をなくす事が簡単に想像できたので丁重に辞退させていただいたのだ。
そうして文芸部部室に残っているのは彼と彼にオセロの負け戦を挑んでいる僕だけとなり、いわゆる
「二人きり」が完成したわけだ。
ゲームの勝利は彼に譲るが、この勝負にだけは負けられない。
僕は緊張に乾く唇を軽く舐めてゆっくりと口を開いた。

「あなたにひとつ言わなければならないことがあるんです」

彼はちら、と視線だけこちらに向けた後に盤上に白を置いた。僕の置いた黒が一気に6つ裏返されて、
盤上を占める白の割合はいまや7割以上だ。
「お前が超能力者って話ならもう聞いたぞ。それともまた涼宮がらみで何かあるのか?」
「いいえ、涼宮さんはこの件には関係ありません。ボクの個人的な事についてお話ししておきたいんです。」
彼は盤上から顔を上げ、少し驚いた顔をしてこちらを見た。
「なんだ、お前が自分のこと話すなんて珍しいな」
「ええ…」
ひとつ深呼吸する。

「あなたがすきです」

「は…?」
「あなたが好きです。愛してるんですよ」
「なんだ?どういうことだ?愛ってなんだ?」
そんな哲学的な話をしているのではない。
「また孤島の時みたいな機関がらみのどっきりなのか?勘弁してくれ」

予想はしていたがあまりの話の通じなさにイライラしてきた。僕は席を立ち、座ったままの彼の
そばまで歩み寄った。

「機関も関係ありません。僕の個人的な話だといったでしょう。あなたが好きなんです。嘘じゃない。
毎日あなたの事ばかり考えてる。いつ閉鎖空間が発生して神人との戦闘で死ぬかも知れない。
そのままあなたに二度と会えないのかも知れない。今日が最後で明日はないのかも知れない。
あなたが欲しいんです。あなたにも僕を欲しがってほしい。僕にとってこれ以外にない、
これ以上も無い。これが唯一の愛の形なんです。愛してるんです。愛なんですよ、これは。」

僕は呆然としたままの彼にしがみつくようにして抱きつきキスをした。

あれ。

ゆっくりと唇を離しまぶたを開けて伺ってみると、彼は怒りと表現して良い表情をしていた。
しまった。急ぎすぎたのだろうか。絶望に全身が冷える。重い石を胸の中に無理矢理詰め込まれた
ような心地だった。
絶対に拒否されたくない。
欲しいものも失うものも彼以外に居ない。ここで彼に否定されるくらいなら死んだほうがましだ。

突然すごい勢いで引き倒されて思い切り床に後頭部を打ちつけた。
ばらばらと音を立ててオセロの石が周囲に散らばる。
せっかくあなたの圧勝だったのに。
ぐらぐらしてやたら痛む頭で状況を受け入れた。
ああ、良かった。
これで良い。

引き裂くような勢いで僕の制服のボタンを外し胸に顔をうずめて来る彼の頭を心から安堵して抱きしめた。

そりゃあもうショックを受けもしたのだろうが、彼は僕でもあきれることにそれから3日で現状を
受け入れてしまった。
いま、僕は昼休みの誰もいない屋上で床に直接座り込んだ彼の足の間に腰掛けるようにして
お昼ご飯を食べている。
座っている彼の足の間にむりやり割り込んだとき、やめろとか人を椅子代わりにするなとか言われたが、
本気で嫌なら僕をおいて別の場所に座れば良いだけの話だし、そもそも二人きりになれる所になんて
来ないだろう。要は照れ隠しだ。もっとも、あーんといって卵焼きを差し出したときには本気で
嫌がられたが。正しく恋人らしいお昼休みの過ごし方といえる。
考えてみれば宇宙人や未来人や超能力者や神とさえ呼べるクラスメイトの存在を許容した人格の
持ち主なのだ、彼は。結構図太い神経の持ち主なのかもしれない。
一ヶ月は覚悟してたんですけどね。
もちろん絶対に立ち直ってくれなくては困るし、現実を拒否されても困るし、無かった事にするなど
絶対にさせないというつもりで僕が挑んだのだが。

後は涼宮さんにだけはばれない様にすれば良い。
大丈夫だ。絶対に悟らせない。
この関係を破壊することだけはできない。
手放す事なんて出来ない。
彼を愛しているのだ。

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