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52 古キョン?
「そういうわけだから二人とも頼んだわよ!あ、重い物は全部キョンに持たせていいからね古泉君」
地球の迷惑という迷惑を結晶にした結果誕生したのではないかと本気で思えてしまうような人格を持つ
真夏の熱帯低気圧女ハルヒの話によると、近所の知り合いが引っ越すことになり、
いらなくなった雑貨や何やらをSOS団にただでくれる事になったため、
俺と古泉で取りに行けという事だった。
お前の知り合いから色々いただくわけだからお前が行けばいいだろう、
そんな俺のごく常識的な抗議活動はもちろん徒労に終わり、半ば追い出されるようにして部室を後にした。
こんな暴挙は日常的に行われているので慣れていたが、今回はどうしても行きたくなかった。
いや、行きたくなかったのではなく、こいつと二人きりにはなりたくなかった。
そう、あの日から俺たちは一言だって話していないのだ。

「好きです」
そう告白されたのが五日前。
返事はいつでもいいです、ただ気持ちを伝えたかっただけですから、
そう言って古泉は部室を出て行った。
あの日以来、俺は奴に何かしらの返事をするどころか、
挨拶さえ交わさずに避け続けていた。無論今日もだ。
ハルヒの知り合いの家に行くまでの道中はお互い始終無言、
受け取った荷物を分担するときに「これは僕が持ちますからこっちをお願いします」
みたいな事を話しかけられた時に「あぁ」だか「おぅ」だか返事をしたような気がするが大体は無言、
そして今、プチハイキングコースともいえる学校まで続く坂道を荷物を持って上っている最中だが、
相変わらずどちらも無言で、俺は気まずさに窒息しそうになっていた。

坂を半分ほど上った頃、この重苦しい沈黙を突然破ったのは古泉の方だった。
すみません、と独り言のように呟いてからこう続けた。
「あなたを困らせるつもりはなかったんです。…あの時の事は忘れてしまって結構ですから」
これ以上嫌われたらさすがに辛いですしね、そう言った古泉の笑顔は引きつっており、
無理に取り繕っているのが如実に見て取れた。
「ちがっ……困ってなんか…」
無意識に口をついて出たのは否定、だった。自分でも理解できないこの込み上げる気持ちは何だろう。
情けないほどに狼狽した声で精一杯否定する。そう、違うんだ、あれは寧ろ―
「……嬉しかったんだよ、ただ、」
やっと分かった。認めるのが怖かった。悔しかった。
真っ当で平凡な人生設計をしていた俺がまさか同性を、
しかも大分「普通」の枠から外れているこんな変な奴を好きになるなんて。
夕日のせいにしては異様に赤い顔を見られないように顔を背けたまま立ち尽くしている
俺の視界ぎりぎりに映っている古泉は、あっけにとられたような表情で俺を見ているようだった。
直後、視界から古泉の姿が消え、何事かと驚いてそちらに目をやると
どうしたことか、古泉はその場に座り込んでうな垂れていた。
「安心したら、気が抜けてしまいまして」
情けないですね、そう言って俺を見上げた顔には先ほどまでの悲しそうな笑みは消えていて、
それを見た俺は俺の中の何かが温かいもので満たされていくのを感じた。

俺は両手で持っていた荷物を無理やり片手に持ち替えて、
ほら帰るぞ、さっさと立てよ、そう言って古泉に手を差し伸べた。
元々高めの俺の体温はこの状況下で体温計を振り切るのではないかというほど高くなっていたのだが、
繋いだ古泉の手は俺のそれ以上に熱くて、俺はついに気が狂ったのだろうか、
こんな変態相手にあぁ愛しいな、なんて思ってしまった。

「このまま繋いで帰りませんか?」
「お前って心底キモイのな…………………………………少しの間だけな」
そう答えた後、気付かれないように視線だけ動かして
古泉を見上げた瞬間心臓が跳ね上がるのを感じ、慌てて目を逸らした。
前を向いていると思っていたそいつはしっかりと俺を見ていて、
しかも浮かべているのはいつもの見慣れた、貼り付けたようなあの笑顔ではなく、俺の知らない極上の笑顔だった。

やられた、と思った。俺は自分が思っている以上にこいつの事が好きらしい。
その事に死にたくなるような恥ずかしさと漠然とした不快感を覚えた俺は
くっつくんじゃないかと思うほど眉を寄せて坂をずんずん上っていった。
隣には誰がどう見ても超上機嫌な笑顔の古泉。しっかりと手は握ったまま。

夕日に照らし出された影にふと視線を落とすと、俺の不機嫌な表情は真っ黒に塗りつぶされており、
そこにはただ手を繋いで幸せそうに歩いている間延びした二人の姿があるだけだった。

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