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28 22&25の続き 完結
「…キョンくん、最近顔色が悪いです」

心配そうな上目遣いに覗き込まれ、俺はほんの僅か虚を突かれた後、至って健康体だというような笑みを返した。
うまくいっていたかどうかは定かでない。
朝比奈さんがどう思ったかもわからなかったが、それでも彼女は納得してくれたようだった。
もしかしたら騙されてくれたのかもしれない。
ぱたぱたと軽い足音を立てて走り去る細い後ろ姿を、何とも言えずに見送った。

「…何を話していたんです?」

その俺の後ろ姿を、更に見ていたであろう趣味の悪い奴の声がした。
はっきり言って非常に不愉快だったが全身が震え出すのを止められない。
みっともなく震える腕を片手できつく掴んだがその手すら小刻みに揺れていた。

首の後ろから冷たい腕が伸びてきて俺を背後から抱き締める。
怖気が立つが振り払うこともできない。後が恐ろしいからだ。
腕は俺の首をそのままへし折るのではないかと思うくらい強く力を篭めてきた。

「随分と親しいんですね、彼女とは」
「…お前の、勘繰るようなことじゃ、ない」
「……可愛いですね、あなたは」

朝比奈さんに害が及ぶんじゃないかと、本当は不安で仕方ないんでしょう?
的確に胸の内を言い当てられて僅かなりとも動揺が走る。
背後からぴったりと体を密着させている相手に、それがばれない筈もない。
張り付いた肌ごと振動させるようなうっそりとした声が俺の不安に答えた。

「大丈夫ですよ。もはや僕には、良い意味でも悪い意味でもあなたへの想いしかない」

彼女が幾らあなたに近付こうが僕には関係のないことです。
何故なら僕は、それとは全く関係無しにあなたを手に入れるから。

今度こそ全身が痙攣したように震え出す。
膝に力が入らなくなり、崩れ落ちた俺を見下ろす、酷薄な笑顔。
俺は世界の全てを拒絶するように、有りっ丈の力で目を閉じて、耳を塞いだ。





あの日から、古泉は実質的に俺の上へ君臨し続けている。
部活中は何でもない顔を装っているが、実際の古泉には恐ろしく残酷な一面があるのだと俺はここ何週間かで否応なしに気付かされるはめになった。
最初は部活中でさえ気配が近付くだけで嘔吐しかけ、本気で失神することも何度かあった。
今では大分その回数も減ってきたが、それでも目を合わせることすら出来ないでいる。
奴の中に昔の面影を探すことも、もうやめた。
そもそも顔も見ることができないのにどうやってより内面に迫っていけというのか。

古泉はもはや恐怖の象徴だった。
…一月過ぎて、俺が自分の変化に気付くまでは。





「ぅ…っく、あ、やめっ…!」
「やめませんよ」

にこやかな顔で、古泉は俺を蹂躙する。朝だろうが昼だろうが構いやしない。
回数は両手の指を越えた時点で数えるのをやめた。
自分を傷付けるだけだとわかったからだ。

俺自身からしてみれば何一つままならない俺の体を、古泉は好き勝手に弄りつくす。
最初の一、二回は本気で暴れて抵抗も試みたが、それも三回目からはやめた。
古泉は俺が刃向かうことに対して容赦しない。徹底的に打ちのめす。
そして気絶した俺を、意識すらない俺をレイプして、ぼろ布のように変えてしまう。

「っあ!あっ、あ、あぐ…っ!!」
「くっ………」

目の前がスパークする。たくさんの火花。それから、一面の白。
全身隈なくいじられて突っ込まれてかき回されて何度も何度も頭がおかしくなるほどイカされて、実際何度かおかしくなりかけたこともあって、おまけに毎回中出しまでされて、そんなことばかり繰り返されて未だに正気を保てる人間などおそらくこの世に存在しないだろうと思う。
少なくとも俺はそっち側の人間じゃなかったようだ。
要するに俺もおかしくなりつつある。

「汚れちゃいました…舐めてください」
「んっ、う……」

口の中へ無遠慮に突っ込まれた指に俺はおずおずと舌を絡める。古泉は嬉しそうに俺の顔を見下ろしている。

舐めているのが自分の精液だとしても既に何も感じない。味もしない。匂いもわからない。
俺は古泉に順応しているんだろうか、それとも俺自身が恐怖かなにかで麻痺しつつあるのだろうか。
ぴちゃ、と音を立てて指が引き抜かれる。舌の上にぞわぞわと背筋が粟立つような感覚だけが残った。
古泉はやはり至極嬉しそうな顔で屈み込み、さっきまで指を銜えさせていた俺の口唇に自分のそれを重ねる。

「本当に可愛い。…愛していますよ」

愛している?それは一体どんな呪文だったっけ?



「……異常が発生している」

今度は長門か。俺は下から見上げてくる大きな両目に苦笑いを返した。
朝比奈さん、長門と来れば次に思い当たるのは当然ハルヒな訳だが、これがそうもいかないだろうという予想は既にかなりの確立で打ち立てられていた。
意味はわかりかねるが、どうやら俺はハルヒの"鍵"らしい。
その俺がこの前から不自然に体調を崩したり部室でぶっ倒れたりすれば当然ハルヒもなんらかのアクションを起こすのが筋というものだろうが、残念ハルヒは俺の異常に全く気付いていなかった。
それが長門の起こすことができるロジカルな奇跡のせいか何だかはわからないが、とにかくこれだけわかりやすい状況でハルヒのみ気付かないとあればそれこそ異常でしかない。
そしてその状況は、誰かが作り出したものなのだ。あいつだけが気付かないようにと。
異常が解除されるまでハルヒは、多分この先もずっと、俺と古泉のことには気付かないのだろう。
ずっと。

「発生してるかもな、確かに」

ぽんぽんと頭を叩かれた長門は、不可解そうな目をして暫く俺を睨んでいた。



目が覚めると古泉の腕の中だった。気色悪い以前に、また気を失っていたことに気付いて蒼褪める。
慌てて体を確かめるが、今回はどこにも暴行の痕はなかった。
単に終わった後、疲れて眠り込んでしまっただけのようだ。

ほっと息を吐いて、即座に安堵した自分に愕然とした。
古泉がすぐ傍にいるにも関わらず何を安心しているのだろう。
俺がするべきことは、今すぐこの場から逃げ出すことだ。

しかし、何時間も酷使された体は思うように動いてくれなかった。
軋むように可動する関節とほんの何分か戦っていた俺は、やがて諦めて元の位置に戻る。
すなわち古泉が俺を生け捕りにしようと伸ばしたままの腕の中へ、だ。
さすがに半端ない勇気が要ったが、目を瞑ってさっと行動すれば何でもないことだった。

近頃になってようやく慣れてきた体温の低い檻の中、俺は音もなく溜息を吐く。

(……何やってるんだ、俺は)

あれだけ古泉が恐かった筈だ。吐き気がするほど。その声を聞くだけで体の自由が利かなくなるほど。

なのに、このところ人形のように扱われ過ぎた俺は、最近本当に人形としての心得が板についてきている。
部活中のいかにもうそくさい笑顔で表面を塗り固めた古泉は恐ろしくて直視することもできないのに、普段とは比べ物にならない傍若無人ぶりで俺を犯す古泉は─────

目を開けて、古泉の寝顔を確認する。
よく眠っているようだ。
安らかな寝顔に、なぜか涙が零れた。
涙もろくなったなぁ、俺。

「どっちが、本当のお前なんだろうな……」

二人の古泉。表裏一体。どちらも鮮明で、どちらも曖昧。
そこにいるのに、いないような。触れているのに、いつの間にか掻き消えているような。存在として、ひどく不確かな。
だとしたら俺に愛だのなんだのと囁き続ける方はどっちだ。俺に容赦なく暴力を振るう方はどっちだ。
セックスの後、いつも少しだけ泣きそうな顔をしているのは。



教えてほしい。神様とか、そういうの。何でもいい。頼むから。
祈るような思いで俺は目を閉じる。更に心なしか身を縮めれば、それだけで目裏に入り込む眩しさはゼロになった。視界は再び闇に閉ざされた。





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