「キョン、ちょっとこれ着けなさい!!」
俺がいつものように部室で、朝比奈さんが淹れてくれた玉露よりも甘美な美味しいお茶を啜っていると、
これまたいつものようにバンと、天然爆走娘SOS団団長涼宮ハルヒが、物騒なセリフと共にドアを開けて入ってきた。
いい加減、ドアが外れるから普通に開けなさい。旧館なんだから、壊れやすいんだぞ。
俺は心の中でそうぼやきつつ、ハルヒをちらっと横目で見る。
「ぶほっ!!」
これは俺が茶を噴き出した音だ。ああ、勿体無い。
じゃなくて、ハルヒが手にしているものは一体なんだ。
おい、そんな誇らしげな笑顔で俺を見るな。そして近付いてくるな。
俺が顔を青ざめさせながら、後ろに下がろうとすると、がしっと肩を掴んできたヤツがいた。
「……おい、古泉」
「はい、何でしょう」
俺が振り向いた先には、エセ爽やか笑顔を通常の三倍で振りまきながら立っている古泉が居た。
相変わらず顔が近いんだよ、息を吹きかけるな、耳元で囁くな。
しかもこれ以上後ろに下がれないように、結構強い力で俺の肩を抑えてやがる。離せ、このヤロウ。
俺が必死の抵抗を試みているのを無視し、ハルヒは満面の笑みでじりじりと迫ってくる。
「古泉君、ナイスよ! さすが副団長ね! そのまま抑えてて!」
「お誉めに預かり光栄です。仰せの通りに」
「ちょ、お前ら人の話を聞きなさ……やめろー!!」
俺の心からの叫びも空しく部室に響き渡り、数秒後それを着けさせられた俺が居た。
「あはは! よく似合ってるわよ、キョン!」
俺の姿を一目見た、ハルヒの第一声がそれだ。
しかも腹を抱えて、さも可笑しそうに人差し指で俺を指し示しながらだ。
人を指差すのはやめなさいってお母さんいってるでしょう。
俺の頭の中には、思わずそんな現実逃避的なセリフが思い浮かぶ。
穴が有ったら入りたいという格言が正に俺の今の状況にぴったりだ。
というか自動販売機の取り出し口でもいい、穴に入りたい、誰か穴をくれ。
俺は、藁をもすがる思いで、部室の隅の窓際で本を読んでいる長門に、視線を向けた。
「……ユニーク」
ああ、長門よ。そんな興味深そうな瞳で俺をみつめないでくれ。
一つの可能性が潰えた俺が、この場からどうにか逃れられないか視線を彷徨わせていると、
お盆を持った朝比奈さんと目が合った。
「ひぇっ!」
朝比奈さんは小さく蚊の鳴くような悲鳴を上げて、お盆を顔に寄せて心なしか頬を染めながら、
もうそれは可愛らしい仕草でチラチラと俺の様子を伺っている。思わず抱きしめたくなってくるぜ。
いやいや、そんなことより俺も恥ずかしくて顔が真っ赤だ。誰か、助けてくれー!
「ふふ、よく似合ってますよ。さすが涼宮さんですね」
「でしょでしょ! 絶対キョンに似合うと思ったのよ。ネットで買って正解だったわ!」
そんなの通販で買うなー! と俺が精神的に疲れ過ぎて、心の中でツッコミを入れていると、
後ろで何やら動く気配がした。ちなみに現在俺の後ろに立っているのは、あの古泉一樹だ。
すさまじく嫌な予感が冷や汗と共に俺の背中を駆け抜ける。本能が逃げろと警告するがそれは遅く、
「はむっ」
「!●○×▼□※=$%@?+&?」
俺が声にならない悲鳴を上げると同時に、部室のあらゆる空気が凍った。
あろうことか、古泉は俺の耳を噛んできやがったのだ。
しかも普通の耳ではない。
「これはいいネコミミですね」
「古泉! お、おまっ、何、人のミミ噛んでんだよ!!」
「おや、もうネコミミを気に入りましたか。それは良かったです」
「良くないだろ! というか、口を離せ!!」
朝比奈さんがつけたら凄まじく似合うであろう、白地にピンクの猫耳を着けさせられた俺が、
妖しく笑いながらはむはむ甘噛みしてくる古泉の呪縛から逃げ出そうともがいている間でも、
ハルヒは指を差したまま固まってる。さすがに驚いたらしい。
朝比奈さんはいわずもがな。長門は、本のページをめくる手が止まってる。
もうさすがに俺も泣きたくなってきた。何なんだこの羞恥プレイ。非日常過ぎるぜ。
「お願いがあるのですが」
「何だよ」
俺が今日最大の悪寒を感じながら、ギギギと首を軋ませながら古泉の方を振り向くと、
そこには、本日最大級の笑顔で微笑んでいる忌々しい顔があった。ああ、忌々しい。
そいつは人差し指を立てて、まるでどこぞのアイドルのように、ウィンク付きで言ってきた。
「『ネコミミ・モード♥』って言って下さい」
今度こそ、部室が閉鎖空間になった。
もう、何が起きても俺は知らない。全て耳フェチ変態古泉のせいだ。
俺は半分涙目で、古泉の方を向きながら全力で吠えた。
「絶対、言わん!!」
――――その後、硬直から解けたハルヒに隙を突かれて写真を撮られた事実は、なかったことにしたい。
俺がいつものように部室で、朝比奈さんが淹れてくれた玉露よりも甘美な美味しいお茶を啜っていると、
これまたいつものようにバンと、天然爆走娘SOS団団長涼宮ハルヒが、物騒なセリフと共にドアを開けて入ってきた。
いい加減、ドアが外れるから普通に開けなさい。旧館なんだから、壊れやすいんだぞ。
俺は心の中でそうぼやきつつ、ハルヒをちらっと横目で見る。
「ぶほっ!!」
これは俺が茶を噴き出した音だ。ああ、勿体無い。
じゃなくて、ハルヒが手にしているものは一体なんだ。
おい、そんな誇らしげな笑顔で俺を見るな。そして近付いてくるな。
俺が顔を青ざめさせながら、後ろに下がろうとすると、がしっと肩を掴んできたヤツがいた。
「……おい、古泉」
「はい、何でしょう」
俺が振り向いた先には、エセ爽やか笑顔を通常の三倍で振りまきながら立っている古泉が居た。
相変わらず顔が近いんだよ、息を吹きかけるな、耳元で囁くな。
しかもこれ以上後ろに下がれないように、結構強い力で俺の肩を抑えてやがる。離せ、このヤロウ。
俺が必死の抵抗を試みているのを無視し、ハルヒは満面の笑みでじりじりと迫ってくる。
「古泉君、ナイスよ! さすが副団長ね! そのまま抑えてて!」
「お誉めに預かり光栄です。仰せの通りに」
「ちょ、お前ら人の話を聞きなさ……やめろー!!」
俺の心からの叫びも空しく部室に響き渡り、数秒後それを着けさせられた俺が居た。
「あはは! よく似合ってるわよ、キョン!」
俺の姿を一目見た、ハルヒの第一声がそれだ。
しかも腹を抱えて、さも可笑しそうに人差し指で俺を指し示しながらだ。
人を指差すのはやめなさいってお母さんいってるでしょう。
俺の頭の中には、思わずそんな現実逃避的なセリフが思い浮かぶ。
穴が有ったら入りたいという格言が正に俺の今の状況にぴったりだ。
というか自動販売機の取り出し口でもいい、穴に入りたい、誰か穴をくれ。
俺は、藁をもすがる思いで、部室の隅の窓際で本を読んでいる長門に、視線を向けた。
「……ユニーク」
ああ、長門よ。そんな興味深そうな瞳で俺をみつめないでくれ。
一つの可能性が潰えた俺が、この場からどうにか逃れられないか視線を彷徨わせていると、
お盆を持った朝比奈さんと目が合った。
「ひぇっ!」
朝比奈さんは小さく蚊の鳴くような悲鳴を上げて、お盆を顔に寄せて心なしか頬を染めながら、
もうそれは可愛らしい仕草でチラチラと俺の様子を伺っている。思わず抱きしめたくなってくるぜ。
いやいや、そんなことより俺も恥ずかしくて顔が真っ赤だ。誰か、助けてくれー!
「ふふ、よく似合ってますよ。さすが涼宮さんですね」
「でしょでしょ! 絶対キョンに似合うと思ったのよ。ネットで買って正解だったわ!」
そんなの通販で買うなー! と俺が精神的に疲れ過ぎて、心の中でツッコミを入れていると、
後ろで何やら動く気配がした。ちなみに現在俺の後ろに立っているのは、あの古泉一樹だ。
すさまじく嫌な予感が冷や汗と共に俺の背中を駆け抜ける。本能が逃げろと警告するがそれは遅く、
「はむっ」
「!●○×▼□※=$%@?+&?」
俺が声にならない悲鳴を上げると同時に、部室のあらゆる空気が凍った。
あろうことか、古泉は俺の耳を噛んできやがったのだ。
しかも普通の耳ではない。
「これはいいネコミミですね」
「古泉! お、おまっ、何、人のミミ噛んでんだよ!!」
「おや、もうネコミミを気に入りましたか。それは良かったです」
「良くないだろ! というか、口を離せ!!」
朝比奈さんがつけたら凄まじく似合うであろう、白地にピンクの猫耳を着けさせられた俺が、
妖しく笑いながらはむはむ甘噛みしてくる古泉の呪縛から逃げ出そうともがいている間でも、
ハルヒは指を差したまま固まってる。さすがに驚いたらしい。
朝比奈さんはいわずもがな。長門は、本のページをめくる手が止まってる。
もうさすがに俺も泣きたくなってきた。何なんだこの羞恥プレイ。非日常過ぎるぜ。
「お願いがあるのですが」
「何だよ」
俺が今日最大の悪寒を感じながら、ギギギと首を軋ませながら古泉の方を振り向くと、
そこには、本日最大級の笑顔で微笑んでいる忌々しい顔があった。ああ、忌々しい。
そいつは人差し指を立てて、まるでどこぞのアイドルのように、ウィンク付きで言ってきた。
「『ネコミミ・モード♥』って言って下さい」
今度こそ、部室が閉鎖空間になった。
もう、何が起きても俺は知らない。全て耳フェチ変態古泉のせいだ。
俺は半分涙目で、古泉の方を向きながら全力で吠えた。
「絶対、言わん!!」
――――その後、硬直から解けたハルヒに隙を突かれて写真を撮られた事実は、なかったことにしたい。
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