2ntブログ
閉鎖空間な保管庫
ここは「涼宮ハルヒで801スレ」のネタ保管庫非営利サイトです。 女性向け、BL、801に不快に思わない方のみ自己責任でご覧くださいませ。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
34 古キョン
「…なんて、な」
慣れない小芝居を演じた気恥ずかしさから、肩をすくめながらそう言って
首にかけた手を離すため姿勢を起こそうとした俺の腕が不意にかけた力とは逆方向に引っ張られ、
直後視界が逆転した。
何が起こったかを把握したのは、息がかかるほどの近距離で真っ直ぐに俺を見つめながら
口元だけに笑みを浮かべる古泉と、その後ろに広がる天井を眼前に認めた時であった。
―何で押し倒されてんだ、俺。

「こんなに美味しい状況を僕がみすみす見逃すとお思いですか?」
自分に何が起きたのか理解するだけでも相当な時間を要したのに
そいつの口から吐かれた台詞は俺の理解の範疇を軽く成層圏あたりまで越えていて、
その意味を考える事を放棄してとりあえず俺は男にベッドの上で押し倒されているという状況に腹を立てていた。

「…何のジョークだ、古泉」
だから顔が近いんだよ顔が。心の中でそう毒づいて、
自分が瞳に映っているのを確認できそうなほど顔を近づけているそいつを睨む。
が、悪意という悪意をこれでもかと詰め込んだ視線はどうやら全く効果がないらしく、
いつもの笑みを崩すことなく俺を見つめ続けている。
しっかりと俺を押さえつけながら。
…動けねぇ。ただの優男ではないのは知っていたがこいつ俺より力強いのか。
絡めるような視線に耐え切れなくなった俺はついと横を向いた。
動揺したらこいつの思う壺だと思い、平静を装って再び問う。
「だからどういうつもりだって」
聞いてんだよ、と続けようとしたがそれは叶わなかった。
突然強い力で顎を掴まれ正面を向かされた上、口を塞がれたからだ。奴自身の口で。
「~~~!!!」
軽くパニックになった俺は今の状況から逃れようとあらん限りの力を振り絞って抵抗を試みたが
古泉の予想外の力の前では全く無意味だった。
「……っん………はぁっ…」
舌の絡むいやらしい音とそこから漏れる自身の声。
生まれてこのかた聞いたことの無かったその音と息苦しさに眩暈を覚え、
意識を手放しかけたその時にようやく俺は解放された。

「顔が真っ赤ですよ」
どこか満足げな笑みを浮かべたまま、全く悪びれない様子で古泉は言った。
当たり前だ頭のおかしい誰かのせいで酸欠なんだよ何考えてんだ冗談だとしても
全然笑えねーよつーか俺のファーストキスの相手が男でしかもいきなりディープだなんて
人生最大の汚点だ朝比奈さんに頼んで時間遡行させてもらおうかなんて事を
抗議することも忘れてぐるぐる考えていると、
「今日はもう寝ますね。おやすみなさいキョン君」
そう言って古泉はベッドに入って背を向けたきり静かになってしまった。

…ホントなんだってんだ。もういい、俺も寝てしまおう。
俺は半ばヤケになって事の一部始終が行われたベッドに入り、布団を頭からかぶって眠りが訪れるのを待った。
心臓は鼓動が古泉に聞こえるんじゃないかと思うほど激しく高鳴っている。

…顔が赤かったのは酸欠だったからだ。それ以外の理由は全く無い。
俺はそう何度も心の中で呪文のように繰り返し繰り返しつぶやき、
まだ感触の残っている自身の唇を手の甲で強く拭った。



コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://heisakukannahokanko.blog.2nt.com/tb.php/36-e3b9e01a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック