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閉鎖空間な保管庫
ここは「涼宮ハルヒで801スレ」のネタ保管庫非営利サイトです。 女性向け、BL、801に不快に思わない方のみ自己責任でご覧くださいませ。
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13
夏の茹るような暑さの中で、一際騒がしく虫が鳴いている。
ほとんど断続的に続くそれに半ば頭痛のようなものを覚えて
無意識に目を閉じれば一気に暗転した視界に残った残像は
ゆっくりと時間をかけて消えていった。溜め息を吐く。

「幸せが逃げますよ。」

抑揚のないくせにどこか楽しげな声色がほぼ真上から
降ってきて思わず視線を上げた。案の定と言うかむしろ
意外と言うか、というのも日の光を背中に受けて
いつもより数倍輝いて見えるその人物は姿形は常と
変わらないものの、最も印象に残るであろう柔和な笑み
そのものは浮かべていない。しっかりと開いた両の眼は
寸分も逸れることなくこちらを見つめていた。

「古泉?」

暗にどうかしたのか、という怪訝な響きを含ませて
問い掛けてみれば妙に澄んだ黄土色の瞳を少し
揺らしながら何ですか?と返される。どこかに
見え隠れする違和感に首を傾げてはみるものの、
先に映る表情の先の感情は少しも伺えなかった。
何故だか振り回されているのは自分だけのような
気がして眉根を寄せる。そのまま視線を戻した。
否、戻そうとした。

不思議なことに脳からの命令に従順に従うはずの
首は上を向いたままびくりともしない。一つ瞬いた。
一体何が起こっているのか全く理解できないまま
顔に差し込む影に気付いた時にはもう息苦しさを
感じている。柔らかい感触が直接熱を孕んで伝えていた。


「…、っ…ぅ、……ぅわっ!!!」

勢い良く顔を背けた所為で頭の中を白い火花が何度も
飛び交ったが今だにオンボロな思考回路は同じような
映像を繰り返している。混乱の極地とはこの事を
言うんだろうか、とどこか冷静な自分が状況を客観的に
把握しようとするもののしどろもどろに泳ぐ目線はやはり
あらぬ方向ばかり捉えていた。

(何かの罰ゲームだったりしないか!?)

自覚なく押さえた口元からくぐもった訴えを途切れ途切れ
発しながらやっと焦点の合ったレンズには変わらずに
何の色も感じられない笑みだけが映っている。
いつの間にか虫の声は止んでいた。
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